「あ!こっちです!お願いします!」
ご遺族は、お寺さんが来られる前にと言うことと同時に、お別れの方が次々とお見えになっている中で、死後変化を早く解決して欲しいと願っていて、様々なご希望を伺いながら、施行に入ることが多い。だけど先日、
「顔師さん!こっちです!」
えっ?そんな職業が、あるんだぁ。と思っていたら、私の方を見て、おっしゃっていた。
「ん?私のことですか?」
「そう、そう!前に私の家族の顔を、元に戻してもらってから私、あなたのこと、ずっとそう呼んでいたのよ!」
そう言えば「復元師」と言う名前も、ご遺族が現場で、名付けてくださったものだった。特に、自分の仕事に対して、どのように呼んでいただいても、全然良いと思っている私としては、結果的に施行の評価が、ご遺族の安心につながっているのなら、全く問題ありません。
そのような現場の後に伺った納棺の、棺の蓋を閉めるとき。
「壁ドンやって欲しいって、おばあちゃん言ってたよね。」と、お孫さんたちの会議が始まった。
私「顔ドン?」
孫「違う、違う!(ご一同様、爆笑)壁ドンです!」
私「失礼しました。(ちょっと恥ずかしい)」
多分、前の家の「顔師」が頭の中にあったのだろう・・・。
壁ドン・・・、そう、私も夢ハウスで子どもたちに教えてもらった。私は夢ハウスで、「いいから、いいから〜!」って子どもたちに壁ぎわに立たされ、私の顔の横を通過して後ろの壁に、子どもたちの手が次々とドン!ドン!と来る。子どもたちは壁ドンのため、私の身長に合わせて、椅子の上に立っている(笑)
ところが私は、何のことだかさっぱり分からず、だけど、たいてい何らかの意味があるのだろうと考えながら聞いてみた。
私「何してんの?」
子「壁ドンだよ!」
私「壁ドン?」
子「ときめいた?ドキドキした?」
私「・・・。そうね、ん〜〜、ま、かろうじて・・・?」
子「壁ドンは、みんなときめくよ!」
私「えっ?ときめきは、ずいぶん昔に忘れたよ。(´・Д・)」」
子「ダメだよ!年を取っても、ドキドキしないとダメだよ〜!」
私「と、と、と、年っ!?(痛いところを突かれた私、困惑)」
子「違う!笹原さんが年ってことじゃなくて!」
私「よしよし、そうやって上手に世の中を渡っていくんだよ!ん〜、そう言う時は、「年を重ねても」って言ったら良いんじゃない?」
子「そっかぁ!」
(意味は変わらないけど(笑)言葉のニュアンスが変わるから)
なぁんて、そんな会話を思い出していた。壁ドン・・・。どうやら、誰でもときめくらしい・・・。私はときめかず・・・。壁ドンは、私にとって異次元の世界の話しだな。本当にどうも、すみません。(笑)
「最後の願いを叶えたいので、壁ドンします!」お孫さんたちの決意。
「はい。」どうするんだろうな?と思いながら見守る私。
棺を覗き込み、考え込むお孫さん。そして、棺の中のおばあちゃんの、お顔の横をお孫さんの手が通過して、
孫「棺の底ドン!」
孫一同「新しい!(一同拍手)」
みんなで拍手!年の近いご遺族の皆さんと私は、
「時代だなぁ〜。」
「そうですね〜。」
「ところで、おばあちゃんの壁ドンの相手は、孫で良かったのか?」
「・・・。」
世の中で流行っていることが、納棺の時間にも起こることが、実はよくある。
中身の価値観は、当然人それぞれ。他人が決めることでもない。何より叶えてあげたかったことが、叶えられることに意味があり、その達成感に満ち溢れた、遺された遺族の表情は、故人を想う最高の表情だから又、良い。
毎日、仕事詰めの私としては、時代の流行りを夢ハウスや、納棺の現場で教えていただくことが多いのでした。
どんと晴れ。