2016年6月20日

日総研、東京セミナー

18日の東京セミナーでも、定員以上のお申し込みをいただき、会場には全国各地から医療・介護職の皆さんが集られました。多忙な中で、今日のセミナーのために調整し、準夜勤や夜勤明けで来たと教えてくれる看護師さん方々も、居られました。

セミナー終了後には、「寝てしまうかと思いましたが、眠たかったこともすっかり忘れて、目がギラギラでした。」と、患者さんや利用者さんとの想い出を更に深めたと、様々に感想を教えていただきました。

疾患などにより、お看取り時の状態や状況も様々です。そして、一人一人の感じ方も心情も同じく様々です。どんな風に捉え、何に気付き、求められていることに沿い、形に変えて行けるだろう。と言うのは、私も毎回の現場で向き合わせていただいています。現場は生き物だと私は思うので、対応出来る力が求められます。

一つでも、皆さんの現場にお役立ていただけるように、お別れの現場から様々にお伝えしました。

思えば私自身も、母の脳動脈瘤と言う病気と直面したとき、困惑したものでした。自分の家族がせん妄(母の場合は性格が変わったように、内容が掴めない話を多々し、ヒステリックに夜から朝まで怒り続けていました。朝になると、元に戻ります)になったこと、それに気が付かず毎日一生懸命対応して、結局私は倒れてしまったこと。誰かに相談出来ていれば、随分違ったかもしれない。甘えた考えをすれば、そう言える。でも、いっぱいいっぱいだった、あの時の私は、誰かに相談することすら、思い付きませんでした。でも、母が発症した凄まじいあの様子の情報が欲しくてアンテナを張り、色々聞いて専門家に辿り着き、教えてもらったことを考えれば、私は心に大きな傷を持ち、ショックを受けていたからこそ、自分の心にその情報がしっかり入ったのかもしれない。たくさんの人に支えてもらったことも、気が付けた。だから、きっとあの時で良かったんだと、母の脳動脈瘤の手術の後に何年も経って、色々な人の温かさに触れ、やっとそう思えたと言うこともありました。

セミナーに来て下さる皆さんも、プロという立場の中で、公私ともに様々な経験をお持ちです。たくさん傷付いて、大切なアンテナを守り、情報を得るために来られます。

セミナースタートの表情と、終了後の表情は全然違うものです。壇上からは、よく見えます。大切人を想い出される瞬間も、よく分かります。

セミナー終了後には恒例のサイン会と、質疑応答の時間を迎えました。その中で教えてくださった、皆さんの心に残った、今回のセミナー中の話は、以下のお話しだったそうです。多くの皆さんの心に、残していただいて光栄です。ありがとうございました。

「私の仕事は、必ずしも最初から好かれている訳ではありません。「帰ってくれ」と言われることも、時々あります。でも、それだけでは私の心に傷は付きません。

大切なのは、その言葉に込められている、その方の本当の気持ちです。それを知ったときに、胸がギュッと苦しくなることはあります。

自分の仕事を客観的に見れば、大切な家族を棺に納めてしまうと言う仕事です。だから、死に向き合えていない状況の中で、嫌われて当然です。でも、亡くなられた方の体を安定させ、笑顔にすることが出来ます。信用してもらえる要素も、積み重ねました。でも、それをどのように選ぶのかは、目の前の方です。選んでもらえるかは、私自身のそのときの対応が大きく左右するのも、確かです。

体の状態が非常に不安定な、赤ちゃんが居ました。呼ばれて、到着しました。お母さんは、私に「帰ってくれ」と言いました。

お母さんの動きの全体を、拝見していました。お母さんは、赤ちゃんを隠しました。私に、赤ちゃんを取られると思ったのだと思います。

少しずつ、お母さんと信頼関係を結んでいきました。止血をし、体液を止め、色を直し、お母さんが少しずつ、赤ちゃんとの想い出をお話ししてくれました。時々、泣き叫びます。悲しみの感情を体の外に出していただくため、手を止めて、見守る時間もありました。

4歳に近い3歳の、赤ちゃんのお姉さんが現場には居ました。彼女は、お母さんの悲しみを目の当たりにし、座ることなく色々と忙しなく動いていました。よく観察してみると、何かを手伝おうとしていることが分かりました。

小さくても、空気を読みます。悲しみを感じているのだと、私は思いました。プロセスからの結果は、手の掛かることが多々ありました。その時々で、お母さんに笑顔が出ます。彼女が動いた結果がチャーミングで、みんなで笑った時です。お母さんが、彼女を胸に抱きました。

「あんたも、いたんだもんね。ごめんね。ありがとう。ごめんね・・・。」

赤ちゃんにずっと手を掛けていた、お母さんの大切な時間。それを、ずっと見守っていた、小さなお姉ちゃん。私に見えていたのは、お母さんの背中にある、彼女の小さな手。お母さんの背中の服を、ギュッと握っていた小さな手でした。

私は、小さな彼女に教えてもらったことがたくさんありました。

彼女は、お母さんを、自分のきょうだいを、家族として自分なりに精一杯守っていたこと。彼女のギュッと握った手は、甘えたい気持ちがあったのはもちろんそうかもしれません。でも、その小さな手は、お母さんを守ろうとする、頼もしさを感じました。

4歳は、記憶に残す子が多くいます。この子を見守ってくれた、この子の家族の人たちも、立派だったと思います。悲しみを隠さず、しっかり見せたお母さんも、立派です。お姉ちゃんが大きくなったとき、お母さんが見せてくれた姿から彼女は、悲しみと向き合う方法を知りました。お母さんと、お姉ちゃんをつなげてくれた赤ちゃんも、立派でした。こちらの家族は、赤ちゃんが生きた時間の価値を、自分たちの力で取り戻したと思います。死の質は、生きる質に等しい。死の中にある事実から、人は意味を探して方向を定めようとします。その中心で、家族と共に頑張ったお姉ちゃんから多くを学び、そして愛おしく感じた現場のお話しでした。」

10時〜16時までのセミナー、大変お疲れ様でした。皆さまお一人お一人の、益々のご活躍をご祈念申し上げます。