2015年5月31日

日総研さん東京セミナー

「新生児・小児におけるエンゼルケアとグリーフケア」の東京セミナーでした。

この講座は、赤ちゃん・子どもに特化した内容になっています。今回も全国から助産師・小児病棟看護師、救命病棟、NICU、ICUなどから管理職の方々も多く、皆さまにお集まりいただきました。

セミナー終了後で、お疲れになっている中にも関わらず、本当にたくさんの方が並ばれて、お一人お一人とお話をさせていただきました。

講演とは又違う技術セミナーですから、遺されたご家族と過ごす時間の中で、押し付けのない関わり方や、専門としていかに、何に注意をして進めていくのか、求められていることの確認や、安心出来る環境の提供のために行うべきこと等々を現場からお伝えしました。

赤ちゃん・子どもを亡くされたご家族は、特にお母さんがずっと抱き続けて居られるので、大人とは又違う方法で進めていく必要があるのが特徴です。

小さな子どもたちが、助産師さんや看護師さんに支えられて、限られた「いのち」を、最期のその日まで精一杯燃焼させて生きていること、社会の中にある灯火の世界を、今日はたくさん教えていただき、共に小さないのちの輝きを深く考えた時間でもありました。

私も現場では、多くの子どもさんのお別れの現場で、お手伝いをさせていただきます。悲しみに慣れることは全くありませんが、今のご縁に何処まで尽くせるか、世界中探したって同じ子は居ませんので、個性と出逢う度に毎回が壁と言っても過言ではありません。だから、現場は自分との戦いも実はあります。自分自身が心で感じる悲しみを胸に秘め、遺されたご家族の安心に変えていくことが、きっと役割だと思うから、微力ながら精一杯尽くさせていただきます。

「病院に戻ったら、精一杯又、頑張ります!」

「自分の仕事を、もっと大切にしようと思いました。」

「社会問題に屈しない覚悟が出来ました!」

「自分自身を違う視点から見ることが出来ました!」等々、

小さないのちと共に生きてくれる、助産師・看護師さんの笑顔に又、私も励まされました。皆さまの益々のご活躍を、心からお祈り申し上げます。お疲れ様でした。


2015年5月28日

お知らせ含め

日比谷中日ビル一階に於いて、「おもかげ復元師の震災絵日記パネル展」が開催されておりました。東京新聞さんの記事でも、パネル展の様子を紹介していただき、大変多くの皆さまにご覧いただいたと、関係者の皆さまからも教えていただきました。ありがとうございました。

大変ご好評いただいたと言うことで、そのまま岩手県に帰ってくる予定だったパネルたちは、東京にて次の会場に移ります。

市政会館盛岡観光事務所さま、
商工観光部 東京事務所内
 東京都千代田区日比谷公園1-3 
市政会館5階

7月1日〜14日までの2週間、場所を変えてパネル展が開催されることになりました。関係者の皆さまに、心から感謝を申し上げます。

東日本大震災で大切なご家族を亡くした、Fさんがパネル展を担当してくれています。仕事をしながらの、パネル展担当はなかなか大変なことです。東日本大震災から「いのち」のことを考えて欲しいと願うのが、Fさんの願いです。きっと、みんな同じ思いですよね。頭が下がります。Fさんを支えてくれる多くの皆さまにも、深く感謝を申し上げます。

Fさん「笹原さん、メッセージお願いします!」(言われていたのにね、書いていなかった私。出勤前に寄ってくれたFさん、ごめんよ。)

私「何て書いたら良い?」

Fさん「もし又災害が起きてしまったら、私たちと同じ経験をしないように、防災の意識を高めて欲しいんです。」

私「Fさんが、自分の思いを書いた方が良くない?」

Fさん「ダメです!笹原さんが書いてください!」

私「はい、すいません。分かりました!」

そして、一枚で良いと言ってもらったのに、気が付けば5枚書いていた。

私「書き過ぎたかな?」

Fさん「先方に選んでもらいましょう!じゃ、私、東京にメッセージを送ったら仕事行ってきます!」

後日、全部のメッセージを使っていただいていたことを、Fさんから聞きました。Fさん、ありがとうね。

そして今月も、全国各地たくさんの新聞社さまに取り上げていただきました。温かい人柄の記者さんの記事を通して、皆さまとご縁をいただきましたこと、深く感謝を申し上げます。

来月初旬発売の7月号、主婦の友社さまから発売されている「ゆうゆう」と言う雑誌に、先日東京から編集長さんと吉永みち子さんが取材にお出でになりました時の記事が搭載されるそうです。普段の現場の話を中心に、恐縮ですが私自身の思いや、東日本大震災に対する思い、「いのち」について、現実に起こる悲しみの現場から、様々にお伝え致しました。吉永みち子さんの視点が又、学びも多く、お知恵もいただき、私自身も大変勉強になり、世界観がグンと広がり、貴重なお時間をいただきました。

納棺の現場や仕事も重なり、睡眠時間が1日3時間平均だった、倒れるかと思った今週。来月からは更にスケジュールもタイトになります。(出来ていないことに対しての完ぺき、ただの言い訳に過ぎない。反省。)

そう、言い訳(自分中心)と説明・実行(全体を通してのBestを尽くす)は全く違うもの。普段から、気を付けておきたいものです。失礼しました!(´・Д・)」




2015年5月25日

日総研さん、大阪セミナー

日総研さんのセミナーは

1、大人と高齢者に向けたエンゼルケア・死化粧とグリーフケア、

2、赤ちゃん・子どもさん向けたエンゼルケア・死化粧とグリーフケア

の2種類のセミナーで全国を回らせていただいています。対象は医療・介護職の皆さま。今回は大人の方に向けたエンゼルケア・グリーフケアのセミナーで、おかげさまでこちらのセミナーは19回目を迎え、受講いただきました方も1000名を超えました。今回も、遠くは福島県からも受講いただいて、管理職である総看護部長さんも多く受講いただきました。質問も大変多くいただいて、お答えしながらセミナーを進めました。皆さま大変、お疲れさまでした。

毎回セミナー終了後、質問をお受けしたり、本にサインを入れさせていただいたりの時間がありますが、今回もとても心に残るお話しを伺いましたので、ご紹介したいと思います。

私は高齢者の施設に勤める看護師です。と言うお話しからスタートしました。ある日、入所者さんの可愛いらしいお孫さんが、施設を訪ねて来られました。

今の施設の入所者さんは、全員が認知症です。可愛いらしいお孫さんを見て、施設の入所者さん一人ひとりが、その方のお孫さんに向かって各々に、自分のお孫さんの名前を呼ばれていました。そのお孫さんが

「はーい!」ってお返事をしてくれて、皆さんに合わせてくれるものだから、みんな自分のお孫さんが来たと思って、ニコニコ笑って、それはそれは幸せそうでした。みんなを幸せな気持ちにしてくれた、素敵なお孫さんの存在でした。

いっしょに過ごした自分たちにとっても大切な利用者さんが亡くなられた後のケアを行うことは、遺されたご家族に対してはもちろんのこと、職員にとっても最期のお世話をさせていただける大切なお別れの時間です。だから、今日のセミナーの内容をみんなで共有して、利用者さんの想い出を胸に、遺してもらえたことをあらためて考えながら、尽くさせてもらいたい。とお話しをしてくださいました。

様々に起こる人生の困難も、
障害を持つ多くの友人から様々に心の内を教えてもらう中でも、
大切な家族を亡くしたときの気持ちも、

ひとりの人の個性として、
現在のこと、そして背景も丸ごと、

理解してもらえないまでも知ろうとしたり、
そっと見守ってもらえたり、
受け容れてもらえること、

そして何より、
お互いを尊重し合って、
お互いの足りない部分を、
さり気なく補い合いながら、
自分のペースも保ち、
笑顔で生きられることは、
それはそれはとっても、
心地よいことなのかもしれません。

傷付いたときに人は、
安心出来る場所を求めます。

元気になれば、
ちゃんと社会に帰って行かれます。

出逢いには始まりがあり、終わりがあります。長い人生の中の一時の関わりなのかもしれませんが、その目の前の方が生きてこられた最期に、ご縁をいただいたこと、出逢えたことに今の自分がどれだけ尽くせるか。私も、お別れのお手伝いをさせていただく、毎回の現場の中で深く考えています。

何も出来ないかもしれないと、何もしなければスタートしません。何も出来ないかもしれませんが、誠心誠意求められる何かを見付けて、出来ることを増やしていく努力を積み重ねていくことは、誰かの笑顔や安心につながると思います。それは、きっとどんな仕事にも共通していることなのかもしれませんね。

ご遺族とは「生きることって大変なこと。」からスタートする会話も少なくありません。でも、生きていること自体が奇跡なんだよね、と言う話にもなります。だって、明日太陽が、月が無くなったっておかしくないんだし!なぁんて会話も出るわけです。何でも、当たり前にあると思っちゃいけない。それが、亡くなった人が私たちに教えてくれ、遺してくれたことだと思っています。

それからお別れの時間の中では、「ありがとう」の言葉が多く出ます。「ありがとう」の気持ちは人が持つ、心根の優しさが溢れ出ています。「ありがとう」の言葉は、それぞれの立ち位置の人に、死を迎えても変わらない関係性を教えてくれて、「陰」となり支えてくれた人に気が付いて、「陰」に対する謙譲語で昔から「お」と「さま」を付けて「おかげさま」の言葉が出て、一旦混乱することはあっても、改めていつかは、気持ちをつないでくれるんだと思います。

目の前の物質も当たり前にあって、与えられるものじゃなく(魔法じゃないから)、何だって無の状態から誰か彼かの努力と力が合って「物」として存在したり、同じく「時」が作られていること、それは出逢いによってあるものの不思議と、それによっての感謝につながっていくものかもしれません。

今回のセミナーも、多くの皆さまにご縁をいただきました。セミナー開始から思っているけど、人の悪口を言う人は、誰一人として居ない。一生懸命に人に尽くそうとされて力をつけようとご尽力される姿を拝見させていただく、きっと職場で人気者なのは間違いの無い、とっても人としてお一人おひとりが魅力的な、今回も癒しの空気に満ちたセミナーでした。セミナーのためにお休みを取るのも、大変なご苦労だと思います。セミナーの内容が一つでも多くお役に立てれば嬉しいです。皆さまお一人おひとりの、益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。


2015年5月20日

プレイボーイ

1000人に一人はパーキンソン。
2人に一人はガン。

そして今、
65才以上の、4人に一人は認知症。そういう時代に入っているそうです。

納棺の現場にも、講演に伺った会場にも、増えておられます。そして、色々と皆さんに教えていただき、私も学びます。

先日、処置バックを車に積んでいたら「すみませんけどもね、◯◯さんの家に行きたいんだけど、この辺にあるはずなんだけど?」と、杖をついた高齢の紳士に話し掛けられました。

なんとなく認知症でいらっしゃるのかな?と思いつつ、

「私も分かりませんので、どなたかに聞いてみましょうか?それとも、いっしょに探しましょうか?」と伺ってみると、

「もうね、歩きたくないの。」
(なんと!チャーミング)
「えー!本当にですか!」
「だいぶ歩いて、疲れちゃった!」
(表情豊かで、よく伝わってくる)
「じゃ、私探してみましょうか?」
「じゃ、ぼく待ってていい?」
(えー!そう来るんだ!天才(笑))
「うん、分かりました〜!」
なぁんて会話をしていたら、女性が走ってきました。そして、静かに私に近付くと、

「実は、施設の利用者さんなんです。外に出てしまって。」と耳打ちして教えてくれました。「そうでしたかー!」と、私は答えて、高齢の紳士に声を掛けました。

「探されていた◯◯さんのことをご存知の方が、いらっしゃいましたよ!」

高齢の紳士は、今までの険しい表情から一変、満面の笑みで、

紳士「そうですか、そうですか!あー、良かった。」(完全に私、その笑みにノックアウト!)
私「お気をつけてくださいね!」
紳士「ありがとうね!又、会おう!寂しくなったら、訪ねておいで!」
施設の職員さん「あ、言い忘れてました!お若い時、相当プレイボーイだったそうです。(笑)」
紳士「何を言うか〜(笑)」

そう言って、紳士は施設の職員さんと、何をお話しされていたのか、たくさん笑って帰って行かれました。

こんなに素敵な笑顔、久しぶりに見たなぁ。認知症とか、そういうことをすっかり通り越して、安心された時の、あの満面の笑みに、私は癒されていました。

認知症の方の、死亡事故も多い現在。納棺の現場での復元は、実は簡単ではありません。そして、至る所で「一緒に探してもらえませんか?」と、外へ出られたお年寄りを探す、家族に声を掛けられることも多くなりました。

あの紳士が、事故を起こさないように暮らせる社会って、どんな感じなんだろう。今回みたいに、きっと徘徊にはその方の、目的があるのかもしれない。しかも、身だしなみがビシッと決まってた。あの紳士の満面の笑みに、又、お会いしたいな。と、地域のつながりを、今一度考え込む時間をいただいた、とっても素敵なご縁でした。






2015年5月15日

九州3県技術セミナー

九州全農様企画で、「九州JA葬祭担当者納棺セミナー」として、今年も九州7県を3回に分けて、セミナーに回らせていただくことになっています。

今回は、一回目。11日に九州の長崎県に入り、

12日に長崎県
13日に佐賀県
14日に大分県

と、朝の10時から16時までのセミナー、その後に一時間ほど担当者さん方からの質問にお答えし、セミナー終了後は電車に飛び乗って、その日のうちに移動しました。

☆長崎県のセミナーでは、当日に台風6号が九州に上陸していて、毎回熱心に参加してくださる島の担当者さん方が、船が出ないことで来れなかったと言う残念なことがありましたが、時間通りスタート。

元々九州と言う場所は、それぞれの地域の歴史もとても古く、伝統やしきたりを重んじ、宗教者の方の力も大きく死生観もお別れの時間の中で、とてもしっかりと存在しています。

亡くなられた方に起きた死後変化などに一つ一つ手を掛けることと、その地域で大切にしていることが、ご遺族にとってどのような意味につながるのか。と言うことも含めて検討しながら進めていきました。


☆佐賀県では、老いると言うことを、特に最近は、考えさせられると言う担当者さんの体験談に、みんなで耳を傾ける時間も発生。様々な事例検討をしながら一つ一つ考えていきました。

「先日、福祉施設に呼ばれて搬送に行きました。到着して、部屋の中を見渡しました。搬送用のストレッチャーを手に、故人(亡くなられた方)を探しても、みんな椅子に座っているし、見当たりません。

「どちらにいらっしゃいますか?」

と伺うと「ここです。」と、言われた方向を見ると、亡くなっているけど、本当に小さく丸まって椅子に座っている小さな小さな、高齢の女性でした。

施設の方が、「そのストレッチャーは、背中が上がりますか?」と聞くもんで、「いやいや、ストレッチャーの背中は上がりませんよ。」と、僕もちょっと焦りましたが(笑)、

その方を見ながら少し考えて「人は、こんなに小さくなっちゃうんだな。」と思うと、とても愛おしくなりました。小さな女性を僕は抱き抱えて、ストレッチャーに横になっていただきました。

担当さんが見たのは、「拘縮」と言う姿で、いのちの火が自然に消える、その時に合わせて、体が準備をしていく姿だったのでしょう。横になりながら、時間を掛けて体が丸くなっていく。その方の一番楽だったと思われる最期のお姿です。お腹の中に居る赤ちゃんのように、特に疾患と「老衰」が重なると亡くなる時に、同じ姿になっていく方も、いらっしゃいます。

「僕は、どうしたら良いのかわからず、膝が曲がったままでも棺の中が窮屈に感じないように、一生懸命ドーム型(蓋の高さがある棺)を探して、安置しました。だけど、あの時、もっと出来たことがあったんじゃないかって、今もずっと考えています。」

死は、その方の人生そのものを表す存在です。担当者さんにも、いろんなことを遺してくれたその方の存在は、担当者さんの心の中に、ずっと存在されていることを感じました。素敵な関係だなぁって、思いました。

担当さんにお伝えしたのは、「拘縮」の解き方で、骨折させない、関節を鳴らさない、力を入れずにゆっくりその方の限界を知りながら、無理をせずに解いていく、その方法をお伝えしました。だけど、担当者さんの、その時の判断が間違っていたと、私は思いませんでした。今のままの姿を、大切にすることは本当は素晴らしいこと。でも、全国何処も火葬場の窯のサイズが決まっているので、棺に膝が当たらないように、棺の窓にお顔が当たらないように、超高齢化社会に入った今の日本では、必須の技術も増えつつあります。

☆大分県では、社会問題に直面した悲しみの現場、司法解剖後の対応や、警察検視の後の様々な話も多く出ました。事例検討をしながら、セミナーを進めています。

特に深く話し合ったのが「合掌」についての話。悲しみの現場では、故人が合掌していないと成仏出来ない!と、心配される方が本当に多いと言うこと。事故や災害、リウマチ等、故人の体の状態により、特に無理しない方が良いんじゃないかと思われることがあります。ここは、僧侶、牧師、シスター、神主と言う宗教者と呼ばれる方の御力をお借りするしかないと、申し送りを含めた相談についての話にもなりました。

昔は悲しみを理解するのに100日は掛かると言われました。100日までは泣いていい。でも、100日経ったら泣くのは止めなさいと、昔の人はよく言います。「いつまでも、亡くなった人の後ろ髪を引いてちゃいけないんだ。心配しているのは、逝く人も遺される人もお互いさま。生きる世界が変わるだけ。関係性は、変わらないんだもの。」亡くなる時に、ご縁をいただいた方が、私に遺してくれた言葉を想い出します。

昔は長い時間を掛けて、悲しみと向き合う時間がありました。今は、お別れの時間自体が、時代と共にとても短くなっています。

昔の葬儀は、長い時間を掛けました。でも、長く休むと会社に席がなくなるなどの理由で現代は、葬儀が数日で終わります。でも、人の心が悲しみと向き合うための時間は、今も昔も変わらないと、現場の中でいつも感じます。そういう現場に居させてもらえることを、大切なことを一つ一つ、又深く考えさせていただいた時間でもありました。




2015年5月11日

壁ドン!顔ドン?

ずっと現場に走っている中で、ご遺族からこう、声を掛けていただくことが多い。

「あ!こっちです!お願いします!」

ご遺族は、お寺さんが来られる前にと言うことと同時に、お別れの方が次々とお見えになっている中で、死後変化を早く解決して欲しいと願っていて、様々なご希望を伺いながら、施行に入ることが多い。だけど先日、

「顔師さん!こっちです!」

えっ?そんな職業が、あるんだぁ。と思っていたら、私の方を見て、おっしゃっていた。

「ん?私のことですか?」
「そう、そう!前に私の家族の顔を、元に戻してもらってから私、あなたのこと、ずっとそう呼んでいたのよ!」

そう言えば「復元師」と言う名前も、ご遺族が現場で、名付けてくださったものだった。特に、自分の仕事に対して、どのように呼んでいただいても、全然良いと思っている私としては、結果的に施行の評価が、ご遺族の安心につながっているのなら、全く問題ありません。

そのような現場の後に伺った納棺の、棺の蓋を閉めるとき。

「壁ドンやって欲しいって、おばあちゃん言ってたよね。」と、お孫さんたちの会議が始まった。

私「顔ドン?」
孫「違う、違う!(ご一同様、爆笑)壁ドンです!」
私「失礼しました。(ちょっと恥ずかしい)」

多分、前の家の「顔師」が頭の中にあったのだろう・・・。

壁ドン・・・、そう、私も夢ハウスで子どもたちに教えてもらった。私は夢ハウスで、「いいから、いいから〜!」って子どもたちに壁ぎわに立たされ、私の顔の横を通過して後ろの壁に、子どもたちの手が次々とドン!ドン!と来る。子どもたちは壁ドンのため、私の身長に合わせて、椅子の上に立っている(笑)

ところが私は、何のことだかさっぱり分からず、だけど、たいてい何らかの意味があるのだろうと考えながら聞いてみた。

私「何してんの?」
子「壁ドンだよ!」
私「壁ドン?」
子「ときめいた?ドキドキした?」
私「・・・。そうね、ん〜〜、ま、かろうじて・・・?」
子「壁ドンは、みんなときめくよ!」
私「えっ?ときめきは、ずいぶん昔に忘れたよ。(´・Д・)」」
子「ダメだよ!年を取っても、ドキドキしないとダメだよ〜!」
私「と、と、と、年っ!?(痛いところを突かれた私、困惑)」
子「違う!笹原さんが年ってことじゃなくて!」
私「よしよし、そうやって上手に世の中を渡っていくんだよ!ん〜、そう言う時は、「年を重ねても」って言ったら良いんじゃない?」
子「そっかぁ!」
(意味は変わらないけど(笑)言葉のニュアンスが変わるから)

なぁんて、そんな会話を思い出していた。壁ドン・・・。どうやら、誰でもときめくらしい・・・。私はときめかず・・・。壁ドンは、私にとって異次元の世界の話しだな。本当にどうも、すみません。(笑)

「最後の願いを叶えたいので、壁ドンします!」お孫さんたちの決意。
「はい。」どうするんだろうな?と思いながら見守る私。

棺を覗き込み、考え込むお孫さん。そして、棺の中のおばあちゃんの、お顔の横をお孫さんの手が通過して、

孫「棺の底ドン!」
孫一同「新しい!(一同拍手)」

みんなで拍手!年の近いご遺族の皆さんと私は、

「時代だなぁ〜。」
「そうですね〜。」
「ところで、おばあちゃんの壁ドンの相手は、孫で良かったのか?」
「・・・。」

世の中で流行っていることが、納棺の時間にも起こることが、実はよくある。

中身の価値観は、当然人それぞれ。他人が決めることでもない。何より叶えてあげたかったことが、叶えられることに意味があり、その達成感に満ち溢れた、遺された遺族の表情は、故人を想う最高の表情だから又、良い。

毎日、仕事詰めの私としては、時代の流行りを夢ハウスや、納棺の現場で教えていただくことが多いのでした。

どんと晴れ。







2015年5月8日

パネル展のお知らせ

霞ヶ関の日比谷公園の向かいにある、日比谷中日ビル一階フロアに於いて、東京新聞さんの企画・主催で、

5月11日〜25日まで、

おもかげ復元師震災絵日記(ポプラ社さんより出版しています)のパネル展が開催されます。

現在、パネル展のための工事準備中ですが、パネル展会場に展示するための、ご来場いただいたみなさまへ向けてのメッセージを書かせていただき、いつもパネル展のお世話をしてくれている、被災地宮古市出身のFちゃんが、一生懸命に今回のパネル展も担当してくれて、本日発送致しました。

皆さまお一人おひとりの防災意識の中に、何か少しでもお役立ていただけると嬉しいです。

おもかげ復元師の震災絵日記は、先日テレビの一時間番組の中でも、紹介していただきました。

北海道の砂川市にある、いわた書店さんの「一万円選書」の特集でした。どんな本を読んだら良いのか、依頼主が気持ちを書いて、いわたさんにカルテを作ってもらって、いわた書店さんが一万円分の本を、その人のために選んでくださると言うものです。

私は出張先で、その番組を拝見致しましたが、おもかげ復元師の震災絵日記を紹介していただいた内容として、

手と足の障害をお持ちの、とっても可愛らしい若い女性が、美容師とメイクアップアーティストを目指しながら、頑張っている姿がテレビに映し出されました。

彼女は、メイクブラシを頬と肩を使い上手に使いこなします。彼女のメイクは、本当に素晴らしいものでしたが、彼女は悩んでいて、一万円選書をいわた書店さんにお願いしていました。

いわたさんは、彼女のために本を一万円分、選びました。その中に、おもかげ復元師の震災絵日記がありました。
彼女はそれを読んで、こう言っていました。

「本人の人柄や、その人にしかない素敵さを大切にしながら、メイクをすることの大切さを学びました。」

私は著者として、こんなに嬉しいことはありませんでした。とても深く心の底から感動し、心に温かい気持ちが残るものでした。

一つは、彼女が読んでくれた絵日記の中の人たちは、みんな亡くなっている人だけど、亡くなった人たちが、生きている人を勇気付けてくれたこと。彼女が、それをとても素直に感じ取ってくれたこと。

二つ目には、いわた書店さんがお話しされた内容に、一つ一つ驚いて感動したこと。私が現場の中で、とても大切にしていることをあまり口に出したことは無かったのに、絵日記から、それを一つ一つ理解していただいていたこと。

三つ目には、いわた書店さんに、彼女と震災絵日記の中の人たちをつないでいただいたこと。

感動して、涙がポロポロ出てきてしまって、テレビの前で涙が止まりませんでした。

現在は、注文が殺到して一万円選書は、一旦注文は受け付けていないそうです。詳しくは、いわた書店さんのホームページをご覧ください。

おもかげ復元師の震災絵日記は、東日本大震災が発生し、復元に走りながらの中で時間を作って書き続けた、私の個人的な絵日記でした。ポプラ社さんの力を借りて、たくさんの人たちに支えていただき、力をいただき、関わってもらって世に出た本です。そうして今も、又たくさんの方に、大切にしてもらっています。

おもかげ復元師の震災絵日記パネル展、道中どうぞお気を付けてお越しくださいませ。涙が止まらないかもしれませんので、ティッシュをお忘れなくお持ちくださいませ。

このたびのパネル展も、本当にたくさんの皆さまお一人おひとりのお力をお借りして開催されますこと、おもかげ復元師を守り続けてくれる皆さま一同、心から御礼申し上げます。




2015年5月5日

移動夢ハウス?

ゴールデンウイーク中の3泊4日、私の家に、子ども夢ハウスの子どもたちがお泊まりに来ていました。

満月も重なり、納棺の現場が非常に立て込んでおり、3泊4日の内の丸々二日間の日中は特に、なかなか一緒に居られず、「大丈夫!待ってる!」と、子どもたちがみんな我が家でお留守番。私が留守なので我が家のじじ、84才、「おぉ、大丈夫だぁ!」と張り切ってはいるが、実は、夢ハウスの子どもたちに、面倒を見てもらっていた!

そして途中から頼もしい!夢ハウスの吉山くんと一緒に第二陣の子どもが合流し、賑やかなゴールデンウイークとなりました。

私の仕事も、現場が入れば直ぐに走らなければならないので、仕事柄なかなか約束も出来ず、約束しても守れないことも多く・・・。実は、アポイントをいただいても、現場に走れば、お待たせしてしまうこともあるのです。

子ども夢ハウスの子どもたち、藤原先生も、吉山くんも、横ちゃんも、保護者の皆さんも、地域の皆さんも、実は私の仕事を本当によくご理解いただいていて、大人と素敵な関係の子どもたちだから、「大丈夫!」と、言ってくれるのだと思います。毎回、夢ハウスへ行くときも、実は予定を立てられないので、その日の午前中に納棺現場の状況を見てから、夢ハウスへGO!しています。

さて、ゴールデンウイーク中の、我が家でのお泊まり会。

戦後70年を迎える今年ですから、子どもたちと北上市内にある、特攻隊の飛行場跡地に、様々な話をしながら行きました。

そして、ショッピングモールや子どもたちから希望があったお店などへ。

「土地が、すごくいっぱいあるんだね!」車を走らせていると、広い田んぼや山々などの風景を見て、吉山くんも、子どもたちも、現在の沿岸部の状況をよく知っているからだと思います。そう話していました。

それから私から、子ども夢ハウスのみんなに一つ、お願いをしました。以前、病気と闘っている方が居られました。「克服して、夢ハウスへ行く。」とずっと話されていましたが、残念ながら亡くなられました。せっかくみんなが北上市に来てくれたから、お墓参りをお願いしました。

北上市内のお寺に到着。が、亡くなった後に、私も初めてその方のお墓参り。お墓が、何処にあるのか分からない。吉山くんの提案で、みんなで探そう!と言うことになり、みんなで探し出した。そして子どもたちは、なかなか見付からないので、その方の名前を呼びながら「◯◯さ〜ん!」「◯◯さ〜ん、何処ですか〜!」

広い墓地をどんなに探しても、でも、やっぱり見付からない。

みんなで話し合って、やっぱりお寺に聞こう!と、言うことになり、お寺のチャイムを「ピンポーン」

「すみません!◯◯さんのお参りに来たけど、何処に居るのか分かりません!」子どもたちは元気いっぱい、聞いていました。そして、お寺さんに、お墓まで連れて行っていただいて、

「あったー、何回も通ったのに〜」
「ありがとうございました!」等々、感動の対面をして、

それから、みんなでお墓を洗い、洗い・・・!?子どもたちは、「ご近所さんだから」と、一つ一つのお墓に話し掛けながら前後、両隣のお墓も洗い出し、「きれいにしましょう!」「気持ち良いでしょー」

大変強い風の中、苦戦してやっとつけた御線香も、前後、両隣にも「どうぞー!」「どうぞーー!」ちょっと離れた所までも「どうぞー!」さっき、間違った墓石の所にも「間違って、すみませんでしたー!」子どもたちの、素敵な普段の生活が、垣間見えました。

「御線香は、墓石の上には置かないよ!」「えー!じゃぁ、何処にあげるの?」「ここ、ここ!」「へぇー、そうなんだぁ!すみませんでしたー!」

なんとも可愛いらしい、お墓参りとなりました。( ̄^ ̄)ゞそして、墓石の主の皆さま、2時間ばかしの時間、子どもたちの一生懸命にお付き合いいただいて、ありがとうございました。そして、大変お騒がせしました。

吉山くん、夢ハウスの子どもたち、お墓参りを、本当にありがとうございました。みんなのお陰でやっと、御本人の思いに応えられた気がしました。

優しい子どもたちの姿に癒されたのは、きっとお墓の主の皆さまも、私と同じ気持ちだったかもしれません。






2015年5月1日

DVD発送のお知らせです。

大変、お待たせ致しました。

本日、「さくらの納棺〜参加型死化粧〜」予約特典付きDVDの発送準備が整いまして、明日に発送致します。

しっかり確認したい項目が、チャプターで見直すことが出来るようになっています。

今回のDVDの内容として、時間を掛けずに出来る施行として、お別れの時間に遺されたご家族から希望の多い項目を、造形心理学や、黄疸の復元などを取り入れながら、ご家族の立場からの評価を主として、解説致しております。基本的に、ご家族の希望に沿った形で仕上げる方法をメインにまとめ、納棺の現場からお伝え致しております。

現在、大変多くのセミナーのご依頼をいただいておりますが、スケジュールがなかなか合わず、伺うことが出来ていないのが実情です。実は、2年半先までのお申し込みをいただいている講演などもございまして、同時にアポイントをいただいて、全国各地から弊社にお客さまがお越しになられているので、大変スケジュールが詰まっており、ご希望に添えないことも多く、私としても残念で且つ、皆さまには大変、ご迷惑をお掛け致しております。

技術中心のセミナーがご希望だった医療・介護職、納棺担当の皆さまには、こちらのDVDが、お役立ていただけると思います。宜しければ、どうぞご活用ください。

又、技術中心のセミナーとして、日総研さんでは全国5〜6カ所を、綜合ユニコムさんのセミナーは東京で年二回、開催いただいています。どうぞ、ご都合が合いましたら、受講いただければと思います。

一対一が絶対に良い!とお考えの方は、弊社マンツーマンセミナーをお申し込みください。

多くの皆さまにお申し込みをいただきました教材DVDは、明日の発送です。
早い所では明後日、沖縄県でも3日後には到着予定です。

皆さまの現場で、一つでも多くお役立ていただければと思います。皆さまお一人お一人の、益々のご活躍をご祈念申し上げます。




マンツーマンセミナー、修了!

10日間の岩手県滞在で、四国からマンツーマンセミナーにお越しになっていました。

特訓続きで大変だったと思いますが、これからご縁をいただいた方と、真剣に向き合うための、猛特訓です。出来なかった、叶えられなかった、そういう今までのご縁が、きっとこれからを支えてくれます。

これから暑い夏を迎える前に、梅雨の時期に入りますから、亡くなられた方の体が、変化をし易い時期に突入します。故人に恥をかかせずに、しっかり守るのは私たちの使命だと思っています。亡くなられた方の体が変化をしてしまえば、遺された家族の気持ちもネガティヴに変わってしまいます。そうならないように、神経を張り詰めます。

今回、マンツーマンセミナーにお出でになった方は、湯灌師として経験豊富な、どちらかというとベテランさんでした。普段の現場の中とは、全く違う参加型納棺と復元の内容に、驚きながらも一つ一つに取り組み、最終は全ての項目が合格ラインまで達しました。個人で会社を立ち上げるとのことで、今回受講されて合格した、二つの修了証書を手に、様々な情報もお持ち帰りいただきました。益々御活躍されること、お祈り申し上げます。

マンツーマンセミナーの初日には、最初に面談があり、そこからセミナーをスタートさせます。その方、その方に合わせたセミナーの内容を組み立てます。マンツーマンセミナーは、新人さんから、ベテランさんまで多くの方に受講いただいておりますが、

実は私のスケジュールの都合もあり、現在はお問い合わせをいただいた時点で、調整をお願いしています。受講いただける日を、幾つかこちらでご提示いたしまして、お選びいただいています。

リピーターが非常に多いマンツーマンセミナーですが、マンツーマンセミナーを一度受講された方は、再度受講される時の価格が変わります。再度受講される時に、受講日といっしょに、ご遠慮なく価格もお問い合わせください。

今後とも、よろしくお願い申し上げます。




いのち新聞、5号!

いのち新聞の特別号を、弊社ホームページのトップページに搭載しました。

東日本大震災が発生し、
大切な家族を亡くし、
遺され生きている私たちは、
何を想い、
何を支えに、
どんな気持ちで、
これからのことを、
自分なりに考えていけるのだろう。

個々の思いのつながりが、
復興という町づくりの、
形になって行けたら良いね。
そう、話しています。

社会に向けている自分の顔と気持ち、
そうじゃない時の自分の顔と気持ち、
どっちも、自分です。

安定して整っていることも、
乱れることもあるけれど、
そういう自分の気持ちの、
バランスの取り方を、
1日の積み重ねの中で、
得ています。

自分という存在と、
ゆっくり付き合っていくために、
悩んだり考えたり、するものです。

苦しい中から出た、
編集部みんなの大事な言葉が、
いのち新聞の中には、あります。

今回の特別号は「あの世」に触れていますが、あの世から見たら、
この世はあの世かもしれないし、

自分が存在してるんだから、
別に他に世界があったって、
そこに誰かが存在していたって、
別に全然言い訳で、

だからと言ってあの世の、
哲学者になりたい訳じゃなくて、

あの世があれば、
自分の大切な家族が、
そこに居るかもしれないねと、

生前の性格を想い出しながら、
クスッと笑える時間を迎えられる、
「あの世」はそう言う、
存在で、ある訳です。

詳しくは、いのち新聞をご覧ください。普段の会話も、載っています。