東日本大震災から、5年が経ちます。
私の仕事は、亡くなられた方のお体を技術を用いて守りながら、遺されたご遺族の悲しみの気持ちの傍で、お別れのお手伝いをさせていただく専門職です。お一人お一人が起こすご遺体の変化や、ご遺族の心情の中にある心の移行に、毎日ご縁をいただいていています。
東日本大震災に於いての、月命日である11日と命日の3月11日には、岩手県警の警察の皆さんが、行方不明の方の捜索を続けてくれています。
「髪の毛一本でも」「指一本でも」「体の一部でも」見付かって欲しい。被災者で今でも家族の帰りを待つ人たちは、捜索を見守ります。
「警察の方々に、感謝の気持ちを伝えたい」と涙を流しながら今、私を訪ねてくださる被災者の方々が口々にそう話してくださいます。それは、少なからず遺体捜索を被災者の人たちも経験しているからであり、そして目的が家族を捜すために行われた行為でありました。捜索がどれほど大変なことなのかを、捜索経験者の被災者の方々は語ります。だから、警察の皆さんが、捜索中に怪我をしないで欲しい。そうなれば、警察の皆さんの家族に申し訳ないと、話してくれます。警察の皆さんの捜索活動と、被災者の皆さんの悲しみの気持ちが繋がっているのは、あの時からずっと続けてくれているからです。あれから5年の月日が流れて、振り返るとあの時の安置所から実は、この5年と言う時間の中で、一時も途切れることなく、一緒に亡くした家族を思ってくれているからだと思います。
命日や月命日は、フラッシュバックする時です。大切な家族を亡くした経験のある方なら、充分にご存知かと思います。その時と、その前後にある記憶が、戻ってきます。きっかけがあれば、記憶の奥底に蓋をしたはずの記憶さえ蘇ります。
警察の皆さんの遺体捜索を、被災者の人たちがこんなに大切にしているその背景と意味が、実はあります。命日のとても切ない日に起こるフラッシュバックですが、警察の皆さんの姿が被災者の遺族としての気持ちを支えてくれています。
どういうことかと言うと、フラッシュバックと言う一人で抱えられないほどの、トータル的な振り返りの現象を、人はnarrative(物語)化することで、人生に組み込む作業をしています。記憶を辿り思い出し、価値を見付け、それを高めたり深めたり、そこから意味を探します。大切な家族と自分との関係を確認して、向き合うための勇気をくれているということになると思います。一つ一つが、人が一人でそんな簡単に出来る作業ではありません。
「どう死を迎えたのか」から、
「どう生きたのか」を見付ける作業。
社会の中に生きている人は、そう簡単に悲しみを外には出しません。悲しみに気付かれないように、悟られないように、どちらかと言うとそうやって生きている人の方が多いと思います。触れてほしくないと思っている人の方が多いです。グリーケア(悲嘆の援助)が盛んになった今だから、もう一度考えて欲しい。すぐに壊れてしまいそうなガラスの様な遺族の心情を、大事にして欲しい、ただそれだけです。ただし、例外があります。そう生きている中で、「理解してくれる人」に出会ったときだけ、悲しみを人は語ります。そういうタイミングが、人生の中に訪れるのです。
警察の皆さんの遺体捜索活動は、そういう意味があるだと思います。「自分の悲しみを知ってくれている」。私も教えてはもらうけど、その姿は毎回報道で知りますが、涙がどんどん出てきます。警察の皆さんの気持ちも知ってるし、被災者の皆さんの気持ちも知ってる。だから、涙が止まりません。自分の中でも安置所での記憶や、当時の沿岸の記憶が蘇りながらも、私の中でも、私の人生として物語化されて行きます。
全国各地に講演やセミナーに伺えば、安置所に支援に来てくださった全国各地の警察の方が訪ねて会いに来て下さることも多くなりました。それを、岩手県警察の皆さんへお伝えします。間に入ることは、どちらの気持ちも表情も知っています。気持ちをお預かりする責任を、いつも感じます。何処の勤務になられたのかな?元気であれば良いけれどと、心配しつつ思い出す方も居られます。普段は見せない悲しみを持ちながらも、きっとご活躍されていると思います。もちろんプロですからね。
「助けに行こう」東日本大震災の地震発生後、多くの人がこの言葉を口にしました。物心つかない小さな子どもまでが、そう言っていたと聞きました。助けに行きたいのに行けない。その後悔を、みんな持っています。だから、警察の皆さんへの感謝の気持ちが深いのだと思います。
普段はあまりここまで語りませんが、明日は東日本大震災から5年です。なので、私が見ている今の皆さんの姿を、お伝えしました。
お空の上に行かれた皆さんと、遺された皆さんの気持ちはちゃんと、つながっている。私は、そう思います。
(ポイント)
支えてくれる警察の皆さんへの恩返しは、スピードを出さずに安全運転をすること。シートベルトを自分身を守るためにきちんとすること。交通ルールを守ること。社会のルールを守ること。等々があります。特に、交通事故死が多いと感じます。スピード違反は、命を落とすだけじゃなく、関係の無い人まで巻き込みます。そんなに大きな事故になるなんてと、そんなつもりじゃなくてもスピード違反は大きな事故になる場合があります。一人一人が気をつけることが出来れば、人のいのち、地域を守れます。認知症の方の事故も多いので、運転者側も歩道を歩いている人も気をつけましょうね。私も運転する人なので、気を付けます。
時間は動いています。動いているということは、生きている。だから、昨日と今日は同じではない。それが、社会という生きものなのかもしれません。対応出来る、一人一人が地域を作ります。よろしくお願いします。