5年前にいのちの授業を担当してくれた、中学校の先生が亡くなりました。癌でした。
子どもたちを遺す、親の気持ちは如何なる心情だったのでしょうか。
この死の世界は答えを求めても、死が現実にある限り、亡くなった人の気持ちを一生懸命みんなで考えても、答えが明確に出ない事が多くあります。
遺された側が大切なことをしっかり握りしめ、遺されたご遺族が見せてくださる、とても素敵な表情に出会ったとき、この世の中ではなかなか出会えない雰囲気に、包まれることがあります。
以下、私なりの亡き先生への報告です。
「私がもし死を迎えるときは、笹原さんにお願いしたい。」
あのとき、笑顔でそう言っていた先生の言葉。今考えると、本気で言っていたんだということを、今になって知りました。あの時に気が付かなくて、本当に申し訳なく思っています。恐らく、そのときに癌である告知があったのかもしれない、先生は様々なことを考えて居られたのでしょうか。
最初の段階で、子どもさん方には、先生の体の説明をしました。私は遺体の専門職ですから、きちんと伝えなければいけないことがあります。
関わり方の説明をすると、真剣に聞いてくれました。
火葬までの5日間、3人の子どもさん方は本当に頑張って、私が伝えた通りに先生の体を守ってくれました。安置から5日目の火葬の日、
「よく、頑張ったね。家族にしか出来ないことだったんだよ。本当に、えらかったね。」と声を掛けました。
毎日通って、子どもさん方と色んな話しをしました。教えてもらうことが、ひとつまたひとつと増える中、毎回、涙がこみ上げてくるのを我慢しました。
火葬の日、出棺の前に最期のお別れをしました。
「お体に触れられる、最後になります。」と説明をしました。
「やりたい!」
一番下の小学生の子が言いました。
先生の手のひらを、一人ひとりの頰に当てて、ゆっくり静かに家族全員がお別れをしました。
一人ひとりの目から、涙が流れました。
私は、少しのお手伝いしか出来ないけれど、逝く側も、遺される側も、お互いを思っていることをゆっくりと色んなことを思い出して、感じていただけたかもしれません。
私が最後に行なったあのことは、きっとこれからその意味が理解できると思います。一番下の小学生の子が中心になって、みんな、笑顔になって、一生懸命やってくれました。
私が伝えたかったこと。
死を迎えても、関係性は変わらないこと。口には出さなかったけど、感じてもらえていると良いなと思っています。
毎日、先生の子どもさん方、涙を流したり、先生に話し掛けたり、考え込んだり、一生懸命お世話をしてくれたりの姿を見せてもらいながら、先生のお話しをたくさん聞かせてもらいました。
火葬の日まで、傍を離れずみんな過ごしていました。
安置3日目、先生のお母さんが涙を流しながら、部屋の中を飛んでいるハエを「殺さないで!本人かもしれないから!」と、みんなに言っていました。
私は、遺体の専門職なので、ハエが先生の体についたら大変だから、退治しようと思っていたけど、言い出せませんでした。そうしたら一番下の子が、
「どうして?」
と聞いたので、私が
「昔から、納棺中にツバメやスズメなどの生き物が入って来ることがあって、「本人が皆んなにお別れをしに来た」と言われていて、納棺中には、生き物を殺さないことになっているんだよ。」と、説明をしました。そうしたら一番下の子が、
「えー!違うでしょ!本人は、ハエじゃないし!何処かに止まったら、ハエ、やっつけるし!」
って言って。皆んなで、大笑いしました。可愛かったです。
そうそう、子どもさんたちが、夢に出てきて欲しいと言っていました。みんな待っているので、先生が少し落ち着いたら夢に出てあげてくださいね。
お体は楽になったでしょうか。一生懸命働いた分、少し休んでくださいね。とは言っても、先生は働き者だったから、きっとそちらの世界の子どもたちに、もう授業をされているのかもしれませんね。他の先生方と、そう話していました。
先生の子どもさん方の、学校の先生に報告しています。みんな頑張って先生とお別れをした懸命なその姿と、お別れの後は、応援体制に入りますと、お伝えしています。
先生のご家族、お一人おひとり、皆さんからお手紙をいただきました。ご夫婦で東日本大地震に御尽力されたこと、心に留めながら、お手紙を拝読して号泣しました。
先生が求めるようなお別れの形に、少しは近付けたでしょうか・・・。微に入り細に入りを心掛けたつもりではおりましたが、力不足の所も多々あったとは思います。その点はどうぞ、お許しいただければと思います。
お盆やお彼岸に、もし時間があったら私の所にも寄ってください。美味しいお菓子を用意して、お待ちしています。
先生・・・、ありがとう。
本当に、お世話になりました。
毎日、たくさんのお別れにご縁をいただきます。目の前の故人も、ご家族一人一人も、この世に一人しか居ない、二人といない存在です。死を持って、生きていること、生きていくことを教えていただく深い時間に、感謝を申し上げます。
岩手県は、冷え込みが厳しくなりました。その分、晴れた日は夜空の星が綺麗です。
「あの世は何処にあるのかな?って、夜に綺麗な星を眺めて、娘のことを想っていたら風邪を引きました。」と、ご遺族からご連絡をいただきました。
「笹原さん、星を眺める時は、厚着して寒くないようにしてね。」
みんな、優しくて思いやりの深い方々です。私も何となく星を眺めて、亡くなられた方々と過ごした時間を想い出しています。プラス、夜空を見上げて、UFO(後日詳しく)や流れ星を見付けるのも、大好きです。時々、見付けるまではとムキになっている自分が居ます(笑)
星空を眺めていると、亡き人と会えた気持ちになれるのは不思議だねと、ご遺族とよく話します。
私自身、自然に歯向かって生きたいことが、自然の一部になったかのような、不思議な気持ちになるものです。
ちょっと長くなりました。今日のブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。