2016年11月8日

じじ、84歳

俺もむかしは、イケメンだったと語るじじ。そして言う。

「言うだけ、ただだから!(笑)」

そんな我が家のじじも、84歳になりました。

昔の人だから、家のことをきちんとしないとダメだという厳しい人なので、どんなに忙しくても炊事、掃除、お客さんへのおもてなし等々、実は昔からけっこう厳しい。٩( ᐛ )و

だけど、お料理もお掃除もプロ並みに、何でも出来るじじ。本当は口出ししたいことも山ほどあると思うけど、やりたいようにやらせてくれて、ちゃんとやっていれば文句一つ言わない。(自分が頑張っていることは、訪問診療の時に言うのが楽しみみたい(笑))

歳を取り、重たいものが全然持てなくなったので、

買い物に行っても1リットル以上のものは、買うの禁止。何故って、買い物袋を持って歩いていたら前のめりになって、止まらなくなって、

「大丈夫ですか!」

って、何度もお店の人に助けてもらっているから。ありがたい、ありがたい。

「昔みたいに歩幅がさぁ・・・、グッと足が前に出ないんだよ。踏ん張れなくなったぁ。」結局、重たい物を持って、助けてもらって、最終的に落ち込むから。1リットル以上のものは、禁止。

なので家の中では、じじが転んで怪我をしないように、段差を出来るだけ無くすように気を付けている。

先日のことだ。

「ピンポン鳴っても、間に合わない。」と、じじが言った。

ピンポンが鳴る
じじの部屋から急いでスタート。
玄関に着く
鍵を開ける
誰も居ない
辺りをキョロキョロ
やっぱり居ない
ポストにご不在通知が!

年寄りの居る家は、玄関に出るまで時間がかかる。歩幅が狭く、ダッシュすると転んでしまうけど、頑張って急いでいる。でも、それを誰も知らない。

いつもの宅急便の人なら待っていてくれるけど、違う人が来た時は、いつもこんな感じ。だから私は言う。

「じいちゃん・・・、どんまい!」

先日のことだ。

納棺現場を終えて携帯を見ると、

「着信   じじ」

とあった。何かあったのかな?と心配になった。だから、じじの携帯に電話を掛けた。

私「もしもし?」

じじ「あ、じじだよ!」(私の心の声→いや、そうだよね。だって、じじにかけたんだもの!)

私「どうしたの?何かあったの?」

じじ「あ、ケチャップとマヨネーズ買ったから!」

私「(心の声→えっ⁉︎今⁉︎)ありがとう。」

じじに買い物を頼むと、何故か台所のテーブルの上に、それはもうきれいに品物が並んでいる。

本当は言いたい・・・。片付けてくれたら良いのに。でも、言えない。じじの顔が、買い物行って来たから!的な、どうだ!みたいなドヤ顔になっている・・・。だから私は黙って、静かに、片付ける。私、えらい。

ちょっとすごいところもある。

我が家の3匹の猫が、きちんとじじの言うことをきく。というより、じじの動きに合わせて、気を使っているようにさえ見える。これは、まさに魔法に違いない!

じじ「はい、掃除するから、これに入りなさい。」

と、猫のゲージの戸を開ける。猫たち3匹、次々と別の小さなゲージに入る。

じじ「はい、ちょっと待っててね。」

小さなゲージの扉は開けっ放し。私が同じことをしたら、きっとチャンスとばかりに逃げられる。が、猫たちはそのまま中にいる。

じじ「はい、終わったよ。どーぞ、お帰り。」

猫たち、次々と言うことを聞いて猫小屋に入っていく。なんとも・・・、素晴らしい魔法だ。

それから「育爺(いくじい)」と呼ぶと、喜ぶ。言い過ぎると、怒る。(笑)

お孫さんを亡くした祖父母の心の援助の希望があることも多く、納棺の現場の後で、アフターに行く前に、おじいちゃんの気持ちを相談することもあります。ゴーゴー泣きながら教えてくれるじじのアドバイスは、実はとても為になる。現場から戻り、祖父母の方々の心の深さを伝え、相談に乗ってくれた御礼に、じじの大好きな羊羮をプレゼント。

「年寄りでも役に立つことがあるなら、いつでも声掛けろよ!」

と語るじじの後ろ姿を見て、相談したことが嬉しかったのか、羊羮が嬉しかったのか・・・。きっと、誰かの表情が穏やかになってくれたことを、共に喜んでくれたのだと思います。が、完全にゴーゴー泣いたことは、棚に上がってる。年寄りは、何でも棚に上げるのが上手なのだと、じじ談です。

小さくなった背中に、頼もしさを感じました。

そんなじいちゃん、5日で84歳になりました。私がブログで勝手にじじのことを語っているのは知りません(笑)。じじのファンが意外に多いことに驚かされます。いつも温かく見守っていただき、ありがとうございます。ずっと元気でいてもらいたいものだと、思います。