2015年4月19日

日総研さん、福岡県セミナー

九州、福岡県にお邪魔していました。今回は、「新生児・小児におけるエンゼルケアとグリーフケア」のセミナーにおいて、お別れの現場から様々にお伝えしました。

会場には九州を中心に、他の県からも大学病院、県立病院、個人病院の助産師・看護師の皆さんが、NICU(赤ちゃんの集中治療室)、ER(救命救急)、小児病棟から参加いただきました。

実践に向けての技術を中心に、その技術が遺族の心情に、どのように働きかけ、お一人お一人のお別れのお手伝いにつながるのか、10時〜16時までの時間の中で、お話しをさせていただきました。

あまり知られていませんが、一般的に赤ちゃんや子どものお別れの時、葬儀社さんに依頼することは、実は非常に稀です。主に、お父さんやおじいちゃんが手続きをしていて、お坊さんや牧師さん等、宗教者の方が傍で寄り添ってくれているのが、赤ちゃんや子どものお別れの通例です。だから、病院を出発する時の、最後の手当てが小さな体を守り、子と親の火葬までの限られた時間の中でのお別れの時間を、支えてくれます。

「きょうだいを亡くした子ども」の項目が、セミナーの中にあります。どのようなお話しの内容かと言うと、セミナーの中でお話しをさせていただいたお話しを一つ、ここでご紹介します。

「赤ちゃんや子どものお別れでは、お母さんが特に、本人の傍から離れません。抱いて、歩いていることもよくあることです。お父さんは、お母さんの支えになってくれていますが、時に一人部屋にこもり考え込む姿を拝見する所からのスタートです。お母さんは、出発するまで子どもを棺に安置することはほぼなく、安置していたとしても、棺の蓋を閉めることはありません。当然の心情ですから、それでも大丈夫なように子どもさんの体を、技術で守ります。私の技術は、亡くなった人たちが育ててくれたもので、家族のお別れのためにあると思っています。

ある現場で出棺の日、きょうだいを亡くした高校生のお姉さんが私の傍に来て、言いました。「学校もあって、なかなかお見舞いに行けませんでした。でも、心配で心配で仕方ない毎日でした。不安になったその度に、鶴を折り続けていたんです。」自宅納棺だったので、「今、その鶴を持ってこれる?」と聞くと、嬉しそうに「はい!」と言って彼女は走り出しました。持ってきてくれた鶴が入った袋がとても大きくて、「見せてもらっても良い?」と聞くと「はい!」目に涙をいっぱいためた、彼女の姿でした。

小さな折り紙で、きょうだいを思い、一羽一羽丁寧に折ってくれた沢山の折り鶴。聞くと、三百羽を超えていると教えてくれました。私はそれを見たとき、「この子はこの子の世界の中で、必死で今日のこの日まで過ごしていたんだな」と思ったとき、彼女の気持ちに触れた気がして、自分の胸からこみ上げる涙を必死で止めていました。

「鶴、入れてくれる?」と彼女にお願いをすると、傍にいた大人の人たちも、自然な流れで手伝ってくれました。

彼女が私に耳打ちをしました。「一羽だけ、自分で持ちたいです。ずっと、つながっていられる気がするので。」子どもの言葉は真っ直ぐで、又、私は涙をグッとこらえていました。「もちろん。」そう答えるのが、精一杯でした。

悲しみを経験したとき、きょうだいである子どもたちは、子どもの世界の中で、大人の空気を読みながら、耐えて偲んで、過ごしているものです。子どもは、自分の気持ちの中にある大切なこととして親を支えようとしていますし、でも自分の悲しみの気持ちとも共に、過ごしています。

私たちは、他人であるから出来ることが実は、あるものです。その環境を見守り、見極め一人一人の悲しみに気が付き、その方法を提案していくこと。選択するのは本人で、叶えられるように、私たちは手伝うことができるのだと思います。」

普段から、お一人お一人の嘆きと共に過ごさせていただいています。一人一人の大切な思い出があること、それを教えていただける現場の中で、また、自分も生かしてもらっていると感じています。

新生児・小児のエンゼルケアとグリーフケアの本が、本日より日総研出版より発売されました。「子どもケア」の専門誌で6回連載させていただいた内容に、全国を回らせていただいているセミナーの内容を大幅に追加をして、一冊の本になっています。お申し込みは、日総研さん、又はお近くの書店さんでお願いします。