2015年2月6日

だまされたんだよ!

ずっと現場に走りながら、本当に一件一件それぞれの、お別れのお手伝いをさせていただいています。

「だまされたんだよ!」
(いきなりですか!)

とスタートから嘆く、御歳90歳の奥さま。旦那様とのお別れの時間に、私の耳元でこっそり伝えてくださいました。

「そうなんですかぁ。」

「楽させるからって、そう言われて嫁に来た。この旦那、本当によく働くし、酒もタバコもやらないし、浮気もしないし、優しくてすごく大事にしてくれて・・・」

「・・・。」

「あれ?なんで、だまされたんだっけ?」

(えっ?えっ?何がですか?)
「・・・幸せ・・・、でした?」

「・・・だね。(爆笑)」
(素敵!)

「旦那ね、死ぬって言われてたんだけど、頭で理解するのとね、実際に経験するのとね、全然違うものなのね。本当に動揺しちゃったの。でも、みんなに良くしてもらったよ。あ、今度から一人暮らしになるの。遊びに来てくれる?」
(そう、こうして遺族訪問希望は、突然やってくる。)

「はい、伺いますね。」
(にっこり)

「この歳になると、お寺の行事が楽しみなんだよ。毎回、お寺の行事に出てると、「あれ、今日来てないな」って、住職が気が付いて、腐ってる私を見付けてくれるかもしれないでしょ。(笑)」
(身近な方の死を経験すると、誰でも自分の死を意識します。自分の生活の中に死を感じるようになりますから、そうですね、その時が夏ではないことを祈ります。って言うか、さっきの話は、もう良いのかな?(笑))

「お寺で皆さんと、どのようなお話をされるんですか?」

「悪口!」

「悪?」

「いや、愚痴!」
(オーライ!)

あっと言う間の1時間でした。(笑)最後に、腰の曲がられた小さな体で私、ハグされて、

「今日のお礼ね。」

涙をいっぱいためて、棺の窓から御主人のお顔を覗かれていました。表現は人それぞれで、お別れの形もそれぞれです。どんな表現であろうとも、大切なご家族を亡くされたことには変わりません。これから、現実に生活の形が変わる時を迎え、ご家族を亡くされたことを感じられる時間を迎えられます。頼りにされているお寺さんの存在が大きかったので、少し安心しています。少し落ち着かれた頃に、伺ってみようと思います。