2016年1月10日

目はどこを見ているの?

目はどこを見ているの?

子どもたちと関わることが多くなった今。当然、現場にも「遺族」と呼ばれる子どもたちがいます。

「お母さんの目は、今、どこを見ているの?」

お母さんを亡くした子どもに聞かれたことがありました。こういう時、実は悩む、とても、悩む。大切な家族を亡くしてこれ以上心に傷を付けたくないから、どう答えてほしいのか?と考えるから悩む。だから、聞く。

「お母さん、どこを見てると思う?」

そして、その子が答えた。

「こうやってるんじゃない?」と、白目を向いた。

私「プッ(笑)」と、思わず笑ってしまった。「ピスタチオじゃないんだから(笑)。テレビの見過ぎだよぉ(笑)」

お母さんの背中には体温がまだ残っていて、そういう人は、眼球もまだ新鮮だからきれい。だから、言った。

「見てみる?」

その子が近付いて来たので、お母さんの目を見せた。

「あ、まっすぐ見てる!白目じゃないんだ!どこを見てるのかなぁ〜。お母さん、おーい、ここに居るよ!」

ここから、グリーフケアがスタートすることになりました。亡くなった方は、少しずつ腐敗が進んでいくので、時間の経過と共に目が濁っていきます。3日後は見ない方が良いと思うけど、3日後はお骨になっていることで濁ったお母さんの目を見る心配も無く、火葬が翌日だったので出来たことでした。病院で保湿をしてもらっていたので、お母さんのお体の状態は良好。葬儀社さんでの冷却も、きちんとしてもらっていました。みんなでお母さんを守ってくれたから、出来たこと。まぶたが開いたままで乾燥してしまうと、眼球は濁り、眼球の水分が放出されてしまうから、眼球の形が変わってしまうので、この子とのこの時間も、無かったと思います。

「笹原さんがビビることって、何?」

帰り際に、その子に聞かれました。私が現場でビビる?ことは、怪奇現象でも、幽霊でも実はありません。事件や事故の現場がずっと続くと、生活反応(あざや、傷、うっ血の斑点などの心臓が止まる前に出来たもの)にドキッとします。通常は起こるはずのない、死斑の種類が複数あったり、骨折の位置があり得なかったり、それもビビる?ことがあります。事件や事故は、他殺であることもあり、死後の経過(死後変化)から見て取れることも参考に証拠として記録し、警察が必死で故人の尊厳を守るために動いてくれます。その人が最期、どうだったのかを知ってしまうことがあり、それが死後変化や生活反応から分かるので、ドキッとして怖く(切なく)なることがあります。そして、私は答えました。やっぱりそれは、この子には必要ないことかなと思ったので、

「怪奇現象。戸が勝手に開いたり、閉まったりする時があるよ。その方が、家族に会いに来たのかなぁって。最初は怖いけど、そう考えるとね、騒がずに自由にしてもらおうって、思うよ。」

「へぇー!・・・じゃ、怖いはなしして!」

(出た〜!子どもは、どんな状況でも怖いはなしを求めてくることを忘れていた〜!←私の心中です。)

現場は、とても悲しいものです。悲しみの中から想い出を探しますが、そうスムーズに行かない現場が、復元の現場には多くあります。社会問題と一言で言っても、同じ現場はありません。毎日、毎日、悩んだり考えたりしますが、その悩んだり考えたりすることも、出会いの中から発生していることだから、故人からいただいているものだと思って、大事にしています。

何より、子どもはすごい。発想が、考え方が、進むスピードが、思いつくことがすごい!遺された子どもの笑顔は、故人が育ててくれたものなので、故人の笑顔とかぶります。やっぱり、無条件に子どもはかわいいですね。やんちゃだけど(笑)