「こんなに美味しいコーヒーを、飲んだのは初めてだ。」
と、言っていました。話している相手は、高校生くらいの男の子で、恐らくお孫さんのようで、その子はウンウンとうなずいて
「おじいちゃんはコーヒーが好きだから、飲ませてあげたかったんだよ。」
と言っていました。高齢の男性は、むせてなのか、そうじゃないのか、ティッシュで涙を拭いていました。
ふと見るとお孫さんは、足の不自由なおじいちゃんの杖を、ずっと手に持っていました。孝行って、こちらまで素敵な気持ちになるものです。おじいちゃんはお孫さんに、支え合うことや、思いやることなどを身をもって大切なことをきちんと伝え、教えて居られるんだなぁと尊敬した時間でもありました。
普段の生活の中にある、思いやりのキャッチボールが、お別れの時間の中では大切な宝物に変わります。
「当たり前のことが、普通だと思っていたことが、こんなにかけがえのない大事なことだったんだ。」
納棺の現場でよく聞く言葉の中に、生きている時に大切にするヒントが、実はたくさんあります。死の中にある様々なことは、色々な生き方を教えてくれます。微笑ましい光景に出会い、気持ちが温かくなりました。