2016年7月4日

想い出のうた

「死」に携わらせていただく時間・・・。お看取りの中で、お別れのお手伝いの時間の中で、不思議と私が多く出会う曲が、

「アメージンググレイス」です。

誰かが口ずさむと、連鎖してみんな歌い出す。それは何とも言いようのない、穏やかで温かく癒される時間です。

それにしても、何故こんなに愛され、みんなに選ばれ、深く心に触れるのか?常々思っていた私は、音楽のプロとして活躍する知人に聞いてみました。

彼女が教えてくれたのは、以下の通り。

アメージンググレイスは、労若男女問わず好まれ、芸術的に深い歌として生活に密着していて、日本でも好まれて歌われる歌であり、有名な賛美歌です。

アメリカでは故人がお墓に埋葬されるときに、集まったみんなで手をつなぎ、故人を偲び、輪になって歌われる曲なのだそうです。そして、結婚式でも歌われます。生と死の区別なく選ばれる歌が、

アメージンググレイス

この曲は、日本人も好む音感である、黒盤(ピアノの黒い所)で演奏できる曲であること。日本の黒盤で演奏出来る代表的な曲は、「は〜るばる来たぜ函館〜」で知られる、北島三郎さんの函館の女。函館の女と、アメージンググレイスは、黒盤で演奏出来る、同じ音感の曲であるらしい!他にも色々教えてもらったけれど、これは、驚きと発見でした!

アメージンググレイスの歌詞を、知れば知るほど、人の心の深さという存在に感銘を受けます。日本語で訳される歌詞も、もちろんステキ。でも、一つ一つの単語とにらめっこして、自分なりに訳していくと、胸がギュッとなってきます。そして、歌ってみると、潜在意識に触れ、声が詰まってしまいます。

イギリスの牧師さんが作った有名な歌であるけれど、その歌詞の中にある、牧師さんが感じたことを人生観に照らし合わせてみると、又、色んなことが感じられる曲でもあります。

悲しみや挫折を、大切なことに気が付いた経験をしたときに得ることが、少なからずあるのかもしれません。持ち合わせていた「プライド」などは、結局、自信のなさから共有を求めすぎていたり、自分にとって知らなかったこと、そういうことを含め、半ば押し付け状態になるので、無意識に人を不愉快にさせることもあり、悲しみに落とす可能性があること。しかしながら自分と向き合うきっかけから、その勇気を持ったときは、様々に意識するチャンスが到来するので、一つ一つを大切にする方法を探り、その行動が関わる人の心と自然に共有出来る穏やかな、心地良い雰囲気を迎えることが出来るという、そこから、深い感謝が生まれてくるということ。振り返ること、反省することは、新しい自分に出会えること。くよくよしても良いけれど、目的を持ってくよくよしよう等々、様々なメッセージとして、受け取ることも出来るのかもしれません。

納棺にご縁をいただいて、遺族訪問をしたときに聞いた話があります。故人が好きだったアメージンググレイスをその後も大事にしている高校生が、アメージンググレイスを聴いて、今思うこと!と、私に教えてくれたことがありました。

「色々やり過ぎると疲れることがある。でも、一つのことを全うしようとすると、結局色々やらなければならない。だから、結局色々やらなければならないのが、全うするということ。」素晴らしい、お話でした。

歌と言うのは不思議なもので、想い出と共に存在してくれていたり、その時々で色んな意味に捉えることが出来たり、何となく歌っているだけで少し気持ちが落ち着いたり・・・と、本当に不思議で、そして生きる上でなくてはならない存在なのかもしれません。

一人一人に、想い出の曲があるかと思いますが、生きる上で実は色々なことにも支えられているんだなぁと、感じました。

ところで、人間以外の動物は歌うのか?と、考え始めた私は眠れなくなって、今を迎えます。(笑)考え過ぎず、とりあえずもう寝ようと決めた、今でした。