2014年10月25日

納棺の時・・・

納棺の時、亡くなられたご本人が可愛がっていた犬や猫が居ることが多い。小さな声で鳴く声が聞こえて、「ワンちゃん、ご本人とお別れをされましたか?棺に入る前の今、お別れされますか?」と声をお掛けすることもあります。とても、お利口さんで、「クンクン」と悲しい声を出して、ご本人の顔を覗き込みます。

子どもさんが安置されていて、全力でその子を守ろうとしている犬が居ました。傍に来る人に向かって、歯をむき出しにして吠えていました。切ない光景でした。「この子が、とても可愛がっていたんです。」と伺いました。「触っても良い?もう少し、待った方が良い?」と、私が犬に聞くと、その犬が私の鼻に自分の鼻を付けて来ました。静かに私の横にお座りをして、その後、その子の腕の上に乗っていました。「ここが気になるの?見ても良いの?」と声を掛けると横に移動してくれました。お布団を取ると、出血していました。「教えてくれたの?偉いね!」と言うと、「ワン!」と言っていました。犬は、全力で飼い主を守ろうとすることがあります。

凶暴な犬が現場に居ると聞き、伺った現場がありました。到着して納棺の準備をしていた時、隣の部屋から犬が大きな声で吠えていました。私には、とても切ない気持ちが伝わってくる声に聞こえました。「準備の間だけでも、ご本人の傍に来てもらって良いですよ。」と声をお掛けしました。隣の部屋から、大きな体の犬が、ご本人の所に一目散に走って来ました。「大好きだったのね?」と犬に色々声を掛けながら、準備を進めました。故人の前では一度も吠えませんでした。納棺が終わり、帰り際に隣の部屋に居た犬が遠吠えをしていました。お家の人が、「車までこの子と送らせてください」とおっしゃいました。葬儀の時は、送ってはいただかないしきたりがある地域もありますが、この時は、オッケーしました。ご本人がこの子(犬)をとてもとても可愛がって居られたことを伺いました。

棺の蓋を締める時、棺の中をずっと覗き込んでいる犬も居ます。故人のお顔を、見つめています。そういう時は、少し待ちます。良い時になると、覗き込むのを終えるからです。「蓋を閉めても良いですか?」と犬に聞きながら、蓋を閉めることもあります。

地位も名誉も、人生の中で手にされた方が、事情があってたった一人で火葬場に向かわれたことがありました。その方がとても可愛がっていた犬とお手伝いさんと、私で故人の乗った、霊柩車が見えなくなるまで見送りました。その犬の後ろ姿が、私は今でも忘れられません。

猫は故人の体の上に乗り、守ろうとします。棺の蓋を閉める時、棺の中に入ってしまう猫も居ました。もちろん説得をして自分の意思で出てもらう訳ですが。

動物はとても素直に、お別れの時間を大切に過ごしています。人は、動物に励まされ、勇気をもらうことがあります。すごいなぁ、っていつも思いながら、動物にも色んなことを教えてもらいます。

私はすっかり忘れてしまっていた自分の中にあるはずの(たぶん?)「素直な気持ち」を動物との関わりで思い出すことがあります。自分も本当は、こうでありたい。そう思いながら犬を見つめて目が合うと、ものすごい勢いで顔を舐められ攻撃にあいます(笑)

次の現場に行って「犬の匂いがする!」と言われたことがありました。「あ、さっき犬に舐められたので」と答えたものの、多分、意味が分からなかっただろうなと後から思ったことがありました(笑)説明は的確にしないとね(笑)動物は可愛いですね。忘れかけていた気持ちを思い出させてくれます。特に私は現場に入ると、嗅覚と聴覚と視覚が特によく働きます。ただ、普段は何にも感じませんけどね(笑)