「すみません、急いでください!」
そう言われて、どうしたんだろうと思いながら、案内されるまま故人が安置されているお部屋へ到着。
「黒くて長い虫が、首のところから出ていて、誰も近付けません!」
と、おっしゃるご家族。
(黒くて長い虫・・・?と私、考える)
お身内の方なのか、
「前に身内を亡くしてるんですけど、亡くなった体からゲジゲジ一匹出てきて。今回も、虫が付いているみたいなんです!」
ゲジゲジが故人から出てきたことは、実は私も経験があるのですが、処置の内容が合っていないと虫が付いてしまう可能性は高く、そういうことなのかな?と思いつつ、
(黒くて長い虫は、10,000人以上の納棺のご縁をいただいた中で、初めての経験だなぁ。どんな虫何だろう?と、又考える・・・私)
私は黒くて長い虫を、確認。ご家族に声を掛け、故人に対面していただきました。確認のとき・・・(なぁるぼど・・・。と思いました。)
私「結論から、お話ししますか?先に確認されますか?」
家族「け、け、結論をお願いします!」
私「では、今、私、それを手に持ちますので・・・」
家族「はい!(目をしょぼしょぼ)」
私「結論ですね、黒くて長い虫の正体は、ご本人が着ていらっしゃる、パジャマの紐ですね。」
家族ご一同様「ヤァダァ〜!うそぉー!えー!(まじまじと紐を見る)本当だ〜!ヤダァ〜!あー、びっくりした!全然、悲しめなかったー!」
家族「なんか、本人の最後っぽいね。いつも、イタズラばっかりしてたから(笑)もー、本当にびっくりしたぁ〜!」
その後、故人の想い出はなしを中心に、和気あいあいと納棺が進んだことは、言うまでもありません。でも、そのくらい、身内の死は慌てるものなんです。色んな先入観や、固定観念から始まることもありますし、少しずつ分解して様々に考えながら進めるのが、参加型納棺ですから、どのような形で始まっても大丈夫です。
当然のことながら、どうしても慌ててしまうことはありますから、だから大切なお別れの時間は、家族といっしょに考えてくれる、他人である誰かの存在が、必要なのかもしれませんね。