2016年2月20日

動物たち 2

東日本大震災の安置所に於いては、犬や猫などの動物の亡骸が集められていた棺がありました。1つの棺にたくさんの動物が安置され、いっぱいになると火葬されていました。人に害をもたらすこともある、亡骸に発生する感染症や様々な害虫の問題などを考えても、素晴らしい判断だったと思います。安置所の警察官に教えてもらったところ、「今ね、捜索に交番勤務の警察官もたくさん入ってくれているんだけど、同じ『いのち』だからって、安置所に連れてくるんだよ。」私はそれを聞いて、気持ちがとても癒されました。

遺体の検視が必要な場合には、警察署の刑事課の刑事さんが基本関わってくれるのが通例ですが、震災の場合は緊急性を要していたこと、広域の災害だったことで応援に来てくれた警察官は、刑事課ではない警察官も多く入ってくれていました。初めて見るご遺体に戸惑ったこともあったのではないかと思います。使命感に、頭が下がりした。震災が発生した年の、夏前のお話しです。

その後、仮設住宅に住む方々とご縁を多くいただきました。一人の高齢の女性から、話して欲しいと言われて、集られた皆さんに向けてお話しをさせてもらったことがありました。

「安置所の中では、たくさんのおまわりさんが、同じいのちだからって、動物の亡骸を安置所に連れて来てくれて、手を合わせてくれていました。」

震災前から、震災後に、一人暮らしになった人たちがたくさん居られましたが、皆さんは犬や猫を家族として一緒に暮らしていたのだと話してくれる人たちも多くいました。「ずいぶんと探したんだけどね、見付けてあげられなくて・・・、そうだったんだね。ありがたい。」と泣き崩れる方も居られました。

そういう地域への配慮をしてもらっていた、というお話しでした。人の思いやりを当たり前と思わず、それを知ることで偲ぶ気持ちを持たせてもらえたこと。大切な存在の背景として、死の存在の中にある、知らなかった思いやりを知ったとき、遺された人たちの生きる力に変わります。静かに感謝する気持ちを、被災者の皆さんと共有する時間でした。