2016年9月5日

いのち新聞・恐山参り

8月29日の月曜日、いのち新聞の編集部のみんなと、恐山にお参りに行きました。

今、全国各地で発生する災害。毎回心を痛めながら、ニュースを見守ります。踏ん張って来た日々(まだ続いているけれど)を、全国から被災地と呼ばれる地域の皆さんから連絡をいただく中で、過去を振り返りながら、経験してきたことを、今を生きるための皆さんからの質問に答えながら、詳細をお伝えする日々です。そして、亡くなられたご家族とのことを、話して下さることも多くあります。毎回の編集部の会議の中で、そういう話しも色々と話し合う中で、段々に「みんなで恐山へお参りに行こうか」自然の流れの中で、実現した今回の旅。

「イタコさんにお願いしてみようか」

今回は、それも目的の一つとして出発しました。普段は言えない、心の奥の悲しみのこと。聞いて欲しい、でも言葉にする前に涙に変わる。その繰り返しで、今日まで来た、みんなの生活。いのち新聞の中では、気心知れた仲間との会話の中に、亡くした家族の話題はよく出てくるし、それがボロボロと涙を流しながらのこれまでの話になることも、よくあります。

みんなの言葉を代弁すると、遺族とか被災者とか、呼ばれることは多いけれど、それは、それぞれの立ち位置を経験した人、一人ひとりのこと。「かわいそうな人を指す言葉ではない」と、遺族や被災者の人たちは言います。意味を知ってもらって、大事に言葉を使ってもらうと、良い形で心も通じると思います。背景も、今の生活も様々だけど、悲しみを経験したことをかみしめながら、振り返りながら糧にして生きていて、救いの手を求めつつも決して同情は好まない人たちばかりです。(事実ではない内容で遺族や被災者を語り、悪事を働く人の被害に遭わないようにしてください。その場合はすぐに警察に相談を。)

「必死で人のために行動してくれている姿」

に、生きる勇気をもらったと話してくれます。警察、消防、自衛隊の皆さんの救護、捜索、救援等々も、自分たちに出来ないことをしてもらえるプロの姿に、自分を取り戻す勇気をもらったと話してくれる人は、多くいます。自分の気持ちを取り戻したら、

「ただ静かに、亡き人を想いたい」

社会に向ける顔と、自分のプライベートな顔と、その他色々、人は色々な顔を持ちます。いのち新聞は、プライベートな部分の悲しみを共有できる場でありたいと、どちらかと言うと「ぶっちゃけ話し」が色々記事になっています。プライベートで自分のペースを見付けてもらえるきっかけでありたい。そうすれば、その人一人ひとりがプロとして、社会の顔を守り、きっとみんなのために又、活躍してもらえるから。

「イタコさん、いなくなっちゃったね。」

恐山のお山に入る時、見付けていた看板。

「イタコの口寄せ」

お山を降りてきたら、なんと看板が無くなっていた。しばらく待つも、イタコさんが戻ってくる気配もない。I先生「ちょっと聞いてくる」と、受付に走って行ってくれた。

みんな、無言で待つ。

「もう今日は、帰ってこないって。イタコさん。」

仕方がないよね。口々にそうは言ってみるも、やっぱり少し残念だった。

「だけど、どうしてイタコさんにお願いしたいと思ったんだろう?」I先生が言った。「あれとこれをと、聞きたいことと考えはまとめて来たんだよ。」I先生の言葉は続く。

「私きっと、自分の気持ちを知りたかったのかな?それに気が付いたから、なんか、スッキリした。今日はもう、帰ろう!」

いのち新聞の編集部のみんな、いつもI先生の言葉に癒され、勇気をもらいます。

恐山の、お山の中には参る順番があります。大人の足でゆっくり歩いて2時間くらい。歩いて、歩いて、最終目的地の極楽浜へ到着。ここは、亡き人に語りかけて良い場所と言われています。湖の向こう側が、あの世だと語り伝えられています。霧雨の中、みんな静かに立って、心の中で語りかけていました。だけど、どんどん頬を伝って出る涙。

「大丈夫!霧雨(きりさめ)だから、泣いてることは誰にも気付かれてないから!」と、なぐさめつつも、

「やっぱり表情筋が、悲しい顔を作ってしまっているわ!」

「じゃ、表情筋に気を付けてみるわ!」

そんな会話を、みんなでしていました。

29日は霧雨が降っていて、みんな最終的にずぶ濡れ。恐山の食道で、みんなであたたかいラーメンを食べて、冷えた体の体温を取り戻しました。色んなことを考える場に立たせてもらって、こんなに考えたこともないからすごく疲れたけど、空模様は霧雨ではあったけど心はとっても晴れやかでした。帰る車中は、みんな爆睡。夢の中で、亡き人に会えた気がしたねと、「しっかりやれよ!」って、言われた感じ(笑)と、みんなで話し合った有意義な旅でした。

私たち編集部員一人ひとりも、それぞれに社会の顔を持っています。私たちもまた、普段の生活と仕事に、一人ひとりがプロの顔に戻る心の準備を整えて解散しました。

お彼岸の頃に出来る予定の次の号で、恐山参りの記事を載せる予定です。(2行の文章なのに「予定」が二つも入って、すみません)楽しみに、お待ちくださいませ。