2015年3月5日

状況別ご遺体処置と死化粧のポイント第12回

翌日の3月4日は、状況別ご遺体処置と死化粧のポイント第12回を迎えました。特殊遺体、困難遺体と呼ばれる「復元」を中心に進めます。この講座に参加される皆さんは、すでに社会問題に直面しています。

そしてご遺族が求めるように「戻したかった」という現場で抱えた、大きな嘆きを講座に持って来られます。一つ一つの復元の項目をお伝えしていると、「あぁ、今、故人を思い出されているんだな」と言う表情にお会いすることが多くある講座です。1日目の講座とはまた違う世界にある、光の当たらない「死」の世界です。孤独死、事故、自殺、事件、災害など、現実にニュースにならない悲しい死が、背景を含めてこの世の中には確実に存在しています。ご遺族の嘆きが深く心に伝わり、苦しい気持ちからスタートすることも多い現場です。

復元に挑む場合、自分の気持ちに向き合わないと続けられません。自分が何をするべきか。今、ここに居る理由はなんだろう。一人仕事で、誰のせいにもできない、復元は自分と向き合わないと出来ないので、そこも大事です。

1日目の講座は、ご遺族の背景も現場に組み込みながら、時間を大切に使っていきます。

2日目の講座は、背景を知った時、自分も大きな嘆きを抱えることが多々あります。だからこそ、どんなに困難でも、自分にできることを精一杯尽くします。その「尽くす」ための技術の引き出しを増やしていただく講習でした。

現場の状況が全く違う2日間の講座ですが、共通のこともあります。特別な声を掛けるよりも、不安を安心に変える技術で、ご遺族の心情をメインに提供する時間です。

両日参加の方も、多くいらっしゃいました。何度もお勉強に来られる方も、いらっしゃいます。葬儀社の葬儀担当さんで納棺も自分でされる方、湯灌師、納棺師、エンバーマーの方も多く参加してくれています。今日は、臨床心理士さんも参加されていました。

私もこの仕事を志した初期には、困難遺体と向き合いながら、たくさんの挫折を繰り返していました。教えてくれる人が居ないから、とても苦しい時期もありました。最初から何でも出来たわけではありません。でも、あきらめたくない、この特殊な状態のままでは、家族が深い悲しみに落ちてしまうから帰せない。私も葛藤の毎日でした。悩みながら故人に触れ、触れるたびにその人にしかないものを見付けました。それが、復元の始まりです。だから、講習を受けられる皆さんの気持ちが、痛いほどよく分かります。孤独だったスタートから、今の復元の技術は多くのDr.に支えてもらえます。病理、法医学、外科、緩和ケア、お医者さんが復元の答え合わせをしてくださったり、医療から復元に活かせる知恵をくださいます。故人への思いが、今の復元を支えてくれています。「死」は「遺体」は様々なことを私たちに教え、つないでくれて、支え、遺してくれる存在です。

ユニコムさんの講座は、癌で亡くなった波多野部長さんと約束したことを守りながら、毎回努めさせていただきます。講座中は、生きていたあの時のように、会場の後ろの席に座り、見守ってくださっているような気がしていました。

受講された皆さんの表情は、講座のスタートの思い込んだ表情から、終了した時は頼もしい表情に変わり、全く違ってました。きっと、引き出しをたくさん増やして、ご遺族の最も安心される表情に出会われることと存じます。皆さんの、益々のご活躍を心からお祈り申し上げます。

綜合ユニコムさんの皆さま、準備から色々と毎回、本当にありがとうございます。受講された皆さま、大変お疲れ様でした。