2015年10月31日

九州JA葬祭担当者納棺セミナー

九州全農さんからの御依頼で昨年に続き、二年目の九州全県の訪問でした。申し込み人数が多いときには、二日に分けて開催した県もありました。長崎県、佐賀県、大分県、福岡県、鹿児島県、熊本県、宮崎県の7県を今年は3回に分けて、10時〜16時までの丸1日セミナー、JA葬祭担当者納棺研修会を昨日、本年度最終の研修を宮崎県で終えました。経済連さん皆さまにも、大変お世話になりました。

葬儀の中の「納棺」に特化した形での講習ではありますが、参加型納棺はとても特殊です。その納棺の中では、様々な方向から「現在」を見て、一人一人に合わせ考えていく「生活」を見付けます。

遺された人が生きていくために、必要なことが多々あります。亡くなられた大切な方を想う気持ちを、生きる基礎に考えていくこと。又はいくつもの課題を抱えて踏ん張ってきた家庭の中で、これからを考える時間。憎しみや恨みも、もちろん現場のスタートにはありますから、その気持ちを自分で納得してそこから次のステップへと、考えてもらうこと。そして、私たちの現場にも増えてきた「認知症」「老々介護」の課題があります。説明や理解の時間の中で、考え方が偏らないように誤解を生まないように皆さんと考えていく時間です。

これまでの社会の進化に伴って考えると、昔は当たり前にあったけれど現代では、通常の生活の中には無い、「死」が現実に起きているとき。現場では遺された方々の笑顔やポジティブな考え方を引き出しながら、どこまで私たちがお役に立てるのか。そういうことを皆さんといっしょに考えた、深い時間でした。

今回の講習の中で、皆さんと現場を考えていたとき、想い出した現場がありました。お母さんを亡くした息子さんが、「やってみたいこと」の一つに、お母さんがいつもしていた「つまらないものですが」と箱菓子を渡す想い出。近所の方にお客さん役を、息子さんがいつものお母さん役をしました。お母さんがどんな気持ちだったのか知りたかったと、彼は最後に教えてくれましたが、皆さんがお付き合いをしてくださったお陰で、彼は答えを出しました。

「お母さんはお菓子を選ぶときに、その人の好きなものを選んでいました。つまらないものと言ったのは、好みが変わっているかもしれないけどと言う心配だったかもしれません。お母さんは、その人の笑顔を見たくて、渡していたのだと思います。でも、お母さんが一番笑顔だったかも(笑)人の喜ぶことが好きだった。僕も、そうなれるように努力します。」

彼は、お母さんと過ごした時間を振り返り、自分の中の答えがちゃんと出すことが出来ました。生きていく中で、こういう時間が基礎になります。お付き合いをしてくださった、近所や親戚の皆さんも、本当に素敵でした。子どもの発言を頭から抑えずに付き合ってくださる粋な大人は、まだまだたくさん居ます。その現場を、ふっと想い出しました。

一人、ちょっとやんちゃな葬儀の担当さんが居ました。「やんちゃですね?(笑)」と聞いたら「そうです!」と答えられました。「だとしたら、子どもさんを亡くしたお母さんが、「棺に入れたくない!」と子どもさんを抱いて歩いても、自由にさせてくれる担当さんですね?」と聞くと、「そりゃ、そうです。いいんだ、それがその人のお別れの形なら、それがベストです。」と答えてくれました。私は心の中で、「よし、みーつけた!」と思っていました。基本はきちんと持っているけれど、やんちゃな人には、考え方に幅があります。だから、私はやんちゃな担当さんが居てくれることに、ホッとします。元ラガーマンと言う担当さんも居ました。チームを構成し、一人のためにみんなで動くこと、そしてお互い様の考え方を共有する力、何より挫折や嘆きを知っていることがスポーツマンの武器です。素敵でした。

講習を終えて帰り際、ふっと思いました。九州は7県なのに、何故「九」州?の疑問・・・。九州は現在7県とされていますが、昔は9つの国があったそうで、九州と言うのだそうです。昔を知り、今を考える。先人が開拓して土を掘り、生きやすいように地盤を固めてくれたから、今の時代を生きている。生かされている時間がある限り、今度は私たちが次の世代に何が残せるのがを、しっかり考えて行動しなければならないと思いました。

たくさんの皆さまにお世話になりました。本当にありがとうございました。皆さんの益々のご活躍をお祈り申し上げます。