2015年9月11日

宮古市へ

9日は、宮古市立山口小学校の五年生の、生徒さんと保護者の皆さんに向けて、90分のいのちの授業。東日本大震災で、皆さんの住む地域が被災しました。一人一人の背景に、一人一人の東日本大震災がありました。

本当に熱心に、みんなが色々な気持ちをお話ししてくれたり、それについていっしょに考えたり、私が生かしていただいている「死」の世界は、「生きる」ことを教えてくれる存在であることを皆さんにお伝えしながら、いのちのことを、亡くなった家族への思いの持ち方の種類、それに必ず関わってくる様々なことなどを含め、お話しをさせていただきました。保護者の皆さんもそれぞれに、津波や震災の経験を涙を流しながらお話しをしてくださいました。終了後、担任の先生に、「授業の準備も片付けもちゃんと出来て、いのちの授業中も、みんなお利口さんでしたねー!」と話すと、「始まる前に、素敵な魔法を掛けました。」と、笑顔でお話しをしてくれました。

帰ろうとした時、子どもたちが私を見つけて走って来て囲まれ、もみくちゃに(笑)、とっても素直な質問の嵐・・・、語り合う時間、そして最後は不思議と前向きになれてしまう、得意のあの話でみんなと大いに盛り上がり、これからをいっしょに考えました。

宮古市にそのまま泊まり、翌日の10日は、出張マンツーマンセミナー(復元師としての技術講習・ステップアップ講習)でした。

東日本大震災発生時、マンツーマンセミナーを今回受講されたNさんは、Nさんの住む地域の安置所の中で、涙をこらえながら全力でお手伝いをしていました。Nさんからの電話で「大勢の人が、安置所に運ばれてくる。」SOSを受けて、他の地域を回りながら、何度もNさんの居る安置所のお手伝いにも入りました。

元々Nさんは、弊社のマンツーマンセミナーを受講していること、現在も現役で現場に走っていることで、都度の課題を持っていて、その課題を技術に変えるための講習として、猛特訓の時間が続きました。

被災地は、被災地特有のお見送りも追加されます。詳しくは言えないところもありますが、死の迎え方は様々でも、ご家族の思いを心に受けて、心動かされての現場のミッションと、諦めそうな自分と、一つ一つ向き合っていくのも復元の難しさです。

Nさんと話をしながら振り返った、自分の時間もありました。私は、このお仕事をさせていただいて12年。東日本大震災でのボランティアとしてご縁をいただいた方を含めず、延べ12,000名のお別れのお手伝いをさせていただきました。12,000通りの死の迎え方と背景があり、12,000通りの悲しみの形がありました。東日本大震災の中でのお別れのお手伝いは、自分の中の別の枠の中にあり、まだまだ答え探しが続いています。Nさんも私も、県内の警察管轄の安置所が閉まる7月末頃までの約4ヶ月間、ずっとご縁をいただいていました。その後も自分の仕事と、地域のこと、震災のことに関する活動は、Nさんとしっかり共有出来ることです。まだまだ終わらない震災について、情報が共有出来る頼もしい同志です。

警察管轄の安置所は、実は出入りがとても厳しいので、地元の人しか入れない特徴も強くあったと思います(宗教者は、地元の宗教者の方が同行であればほとんど大丈夫でした)。安置所のお手伝いの申し出は、この業種だけではなく、どの業種の方も地元の人以外はほとんどの方が断られて帰られたと、後からずいぶん聞きました。警察管轄から地元の安置所に移動した後に、確かに当時は搬送に高額請求をされたりの問題や、棺を遺族の許可なく勝手に開けようとしたり、家族ではない誰かが手を掛けた復元と称する施行の、直しの依頼もご遺族から私のところには多々ありました。Nさんとよく話したのは、評価するのは直接的な被災者の方(ご遺族)一人一人であり、施行する人が決めることではないと言うこと。そういう厳しさは現場はいつも、隣り合わせです。そういう問題が増える度に、安置所の出入りは警察管轄の安置所も地元の民間管理の安置所も、益々厳しくなっていったと感じます。

全国各地で起こる災害の度に、その地元の安置所に入って、お別れのお手伝いをしている弟子の皆さんから連絡が入り、その状況の中からどのように進めていくのか、相談が来ることも多々あります。全国各地同じく、安置所は特に、地元の人しか入れない特徴があります。

技術だけじゃない、ご遺族との関わりと、しきたりや死生観、宗教観、地域性が「死」には直結していますから、そういう難しさがあります。悲しみは怒りに変わりやすいので、安置所の警戒態勢は、そのくらい厳しくて正解だと思います。縁の下の力持ちの皆さんとのつながり、本当に色んなことを同時進行で行わなければならないことが、安置所の中には実は山ほどありました。

過去を振り返り、これからを考える。この二日間での時間は、なんとも不思議な温かい気持ちになれる二日間でした。

明日は名古屋に入ります。

数日の災害のニュースは、宮古市でNさん方と見ていました。心が苦しくなりました。お電話も数件いただきました。災害時は自分の経験上、知らない間に体力が消耗しています。体が資本です。長期戦ですから、横になるだけでも休める時には体を休めて、お体を大切にお過ごしください。心よりお見舞い申し上げます。

岩手県も、洪水警報が発令されて非常に激しい雨になっています。これからは雷も鳴り始めるそうですので、警戒したいと思います。夢ハウスのある地域含め、被災地沿岸部も東日本大震災で地盤沈下をしているので、浸水が心配です。東日本大震災で家族がまだ見付からなかったり、家族を亡くした夢ハウスの子どもたちから管理人の吉山くんに、「今回の災害で、何かお手伝い出来ることは無いか」と、相談があったとのことでした。これから、みんなで話し合って考えていくことになったそうです。