2015年1月18日

酔っ払っていますね。

納棺の現場で時々、深く良い気分になられている、千鳥足的な、特に男性の方に多く見られる・・・酔っ払っていますね?な方。

お酒を呑む理由は三つほどあるようです。
①お酒が好き
②お付き合い
③忘れたい、向き合いたくないことがあるから

ですから、どうしてここまでお酒を呑んでいらっしゃるのかな?と、現場で考えていることはあります。

昔は本当に多かったけれど、今は飲酒運転取り締まりも非常に厳しく、飲酒運転は禁止!が、一般的になりました。岩手県は「にっかん(納棺)酒」が、まだまだ健在で、昔からの名残がしっかり残っています。けれど、今は口をつける真似だけが多いですね。

時々、絡まれることもあります。納棺をお世話させていただくものの使命なのでしょうか。

「おれ、酔っ払ってないよ!」
「存じでおります。」
「酔っ払いだと思ってるんだべ?」
「酔っ払っておられるのですか?」
「いや、ちょっとだけ呑んだ。」
「美味しいですか?」
「・・・・・。」
「そうでもないですか?」
「どんなに呑んでも、もう女房は怒ってくれないんだよね。」

奥さまを亡くされた、旦那様です。ここで、泣いていた娘さん登場。

「お父さんがそんなだと、生き返って怒鳴られるかもしれないよ。今日、夢に出てくるわ、お母さん!楽しみにしてなさい!」と娘さん。そして旦那さんが、娘さんに聞きました。

「怖い顔?優しい顔?」
「怖い顔に決まってるでしょ!お父さんが見たこともないような、怖いお母さんの顔だよ!」
「おれ、酒やめるかな。いや、ほどほどにしておくことにするから、夢に出なくて良いよ〜〜!」

と、奥さまに話し掛けておられました。正に戒めの話を、目の当たりにした私でした。お酒の力を借りて、話したいことを話される方も、納棺の時間には、実はいらっしゃいますから、私は全然気にしません。現実に起こる悲しみは、人それぞれに関わり方も違います。でも、体は壊さないで欲しいなと、心配はしています。

「酒はのんでも、のまれるな!だよな!」旦那さんは、自分でちゃんと締めていました。チャーミングでした。今までは、奥様がたしなめてくれていたことを、娘さんがちゃんと引き継いでくれていた現場でした。

人は、誰でも弱さを持っているものだと思います。記憶と共に、今の生活を整えて行くときの、今の時間はとても大切です。みんな過去はあるし、みんな、悲しみを少なからず持っているし、隠しているから外からは分からない。そうやって、実はみんな生きています。だから、旦那さんの気持ちを、まわりの人たちもちゃんと理解してくれていて、見守ってくれます。気持ちの全部は分かって差し上げられなくても、せめて悲しみの部分は、心でしっかり感じたいと思います。

これからも旦那さんの心の中に、形は無くなっても、奥さまが思い出と共にずっと存在して、支えてくれていると思います。

酒は呑んでものまれるな!ですね。