2013年9月30日

死化粧

「死化粧」と「化粧」は違うって、ご存知でしたか?最近、様々な業種の皆さんから多く質問をいただく内容です。「化粧」はその漢字の如く美しく仕上げます。では、「死化粧」は?と言うと、「死」が付くことで随分と意味合いが違ってきます。元々、古来より日本に伝わる死化粧は、伝統や風習を重んじて、特に昔は冷却する手段が無かったことから、顔などを真っ白に塗り、頬に丸く紅をさす「おてもやん」と呼ばれるものが主だったと言われます。現代のお年寄りが、それをよく知る方が現場でもいらっしゃいます。その理由は、冷却手段が無かった昔は、どんどん死後変化を起こして緑や黒に変化するため、腐敗色を人に見せない様にする目的の意味も兼ねて、最初から真っ白に塗ってしまったと言われます。故人に恥をかかせないため、尊厳を守る手段の一つだったと言う説があります。もちろん、現代でも腐敗が進行しないための配慮、つまり安置法が必要です。故人のお体を落ち着かせて差し上げる安置が出来るようになった現代は、ご遺族の要望として「生前に近く」を求められます。現場では、その人では無くなってしまう余り濃い化粧は、好まれない傾向です。もちろん「生前」にこだわりのメイクをされていた方は、ご遺族の希望通り、その通りのメイクを行う必要があること、故人が沢山の方に会われる場合には、薄化粧が好まれます。男性や子どもに化粧をしてしまうと、余計にご遺族の悲しみを深くしてしまう事もあります。施行をさせていただく場合には、故人やご遺族の背景と、今の気持ち、故人の状態の観察と「教えていただける内容を活かす」技術が求められます。私たちの現場は特に、様々な死後変化に対応した後に、それ等の施行の仕上げに入る訳ですが、配慮すべき点が多々あるのが、現場の大切さです。現場は生きていますから、自己対応能力を常に培う日々の努力も必要ですね。納棺師だけではなく、どのような業種でも、それは共通していると思います。相手の立場に立ち、思いやる心。専門だからこそ、安心していただけるように情報をお伝えすることなど。それが、何の目的なのかを一緒に価値観を擦り合わせて、施行につなげていくこと。研鑽することが、何より求められること。人生が丸ごと仕事ともつながっていること、は皆さん同じだと思います。専業主婦も、外で働く人も、一生懸命働く人が社会を作っているのは同じ。一日、24時間の限られた時間の中で、今日を精一杯生きるのも、明日の準備に今日を生きるのも、本人の人生。どんな人に出逢えるか。出逢いは多くの気付きと、知らなかった新しい世界へつながっていることだと思うので。「死」を意識する納棺の時間は特に、「生」を同じ位意識します。そういう大切なことが根底にあるので、死化粧は、化粧をしてしまって、その方を変えてしまうのではなく、元に戻すことから始まる等々が非常に求められる時間です。色はとにかく濃く付き易く、同時に乾燥が進むと変化し易いので、予測しながら慎重に配慮しています。現場で出来るだけ、希望を施行してくれる人に伝えて下さいね。「死化粧」と「化粧」についてでした。